「認知の歪み」という言葉を耳にすることが増えてきましたが、具体的にはどんなことを指すのでしょうか?
認知の歪みは、私たちが物事を考えるときに無意識にしてしまう「偏った考え方」や「現実とは少しずれた思考パターン」のことを指します。これは、私たちの感情や行動に影響を与え、ネガティブな気持ちを引き起こしやすくする原因になることがあります。
以下は、認知の歪みのよくある例を簡単に説明します。
1. 白黒思考(全か無か思考)
物事を「完璧」か「完全な失敗」かのどちらかで捉える考え方。
例:テストで90点を取ったのに「100点じゃないから失敗だ」と思う。
2. 一般化のしすぎ
一つの出来事から「いつもこうだ」「すべてダメだ」と考えること。
例:一回ミスをしただけで「自分は何をやっても失敗する」と決めつける。
3. 自己関連付け(個人化)
何か悪いことが起こると「自分のせいだ」と考える癖。
例:友達が元気がないのを見て「私が何か悪いことをしたのかも」と思い込む。
4. ポジティブの無視
良い出来事や成果を軽視し、悪い側面ばかりを見てしまう。
例:「成功したのは運が良かっただけで、自分の力じゃない」と思う。
5. 悲観的な予測(カタストロフィック思考)
最悪の結果ばかりを想像してしまう考え方。
例:「会議で発言したら、絶対に笑われるに違いない」と考えてしまう。
さらにいくつかの例を挙げてみます。
❶ 事実:「お父さんとお母さんが喧嘩をしている」
- 認知の歪みが「ない」場合
「仲良くしてほしいなあ」「昨日は仲良かったのになあ」 - 認知の歪みが「ある」場合
「僕のせいで喧嘩しているのかもしれない」「私が70点しか取れなかったから喧嘩してるに違いない」
❷ 事実:「メッセージを送ったのに1時間、既読にならない」
- 認知の歪みが「ない」場合
「寝ているのかな?」「忙しいのかな?」 - 認知の歪みが「ある」場合
「浮気しているかもしれない」「僕/私のことが嫌いになったに違いない」
❸ 事実:「息子が学校で先生の話を聞かずに騒いで注意を受けた」
- 認知の歪みが「ない」場合
「どうして先生の注意を聞かなかったのか、聞いてみよう」 - 認知の歪みが「ある」場合
「どうしてこんなにダメな子に育ってしまったんだろう…」「将来、いい会社に勤められないだろう…」
❹ 事実:「カウンセリングの予約を入れたい」
- 認知の歪みが「ない」場合
「チャットで空いてる時間を聞いてみよう」 - 認知の歪みが「ある」場合
「私なんかが予約を入れると迷惑かもしれない…」
認知の歪みがある人にとって、物事は過剰にネガティブに捉えられがちです。
逆に、認知の歪みがない人は物事を前向きに受け取ります。
この違いは、親子関係や家庭環境など、子どもの頃の体験に大きく左右されるのです。
認知の歪みの連鎖
認知の歪みを持ったまま親になると、その歪んだ考え方を「正しいもの」として子どもに伝えてしまいます。これが「歪みの連鎖」です。
認知の歪みを引き継いでしまうと、子どももまた同じ苦しみを抱えて生きることになります。