「カサンドラ症候群」についてのコラムを書くと、発達に特性がある当事者からは時々以下のような声が聞こえてきます。
- 「どうせ自分は…」
- 「自分の特性を否定されている気がする…」
- 「先生はお母さんの味方なんだ…!」
そんな風に感じてしまうのも、無理はないかもしれません。しかし、味方や敵という単純な問題ではないのです。
『味方とか味方じゃないとか』
そんなわけあるかい! そんな白黒思考でかたづく問題のわけあるかー!
カサンドラ症候群を引き起こす背景には、多くの家族が抱えるストレスが存在します。
お母さんたちは子育てに一生懸命で、自分のケアを後回しにしてしまいがちですが、これが結果的にお子さんの心身に影響を与えてしまうことがあります。だからこそ、お母さん自身の心のケアが非常に重要です。
カサンドラ症候群自体は正式な病名ではないものの、それに伴う「鬱症状」や「パニック発作」「不安障害」などは、無視できない心の負担となります。
お母さんだけがカサンドラ症候群になるわけではありません。
実際には、家族やパートナー・教育者・職場の上司や部下など、発達障害にみられる特性がある人々と密接な関係を持つ人たちも、カサンドラ症候群になりやすいと言えます。
彼らは、相手の特性に対処しようと日々努力し、サポートする役割を担っているうちに、自分の感情を押し殺し、ストレスを蓄積してしまうことがあります。
なぜ私が、カサンドラ症候群のお母さんのケアを最優先に考えるかというと、それが『お子さんの心身を守る最善の方法』だからです。
発達に特性のあるお子さんや患者さんと接していると、「お母さんが嫌い」「うちの親は毒」といった言葉をよく耳にします。これらの背景には、家庭内でのストレスが大きく影響しています。
⦁ 酷い言葉を言われ続けてきた
⦁ お母さんはいつも怒っていて話を聞いてくれなかった
⦁ 「なんで普通にできないの!」ってずっと言われてきた
⦁ 「なんで普通の子みたいにしてくれないの!」とずっと言われてきた
⦁ お母さんはヒステリックで、強制強要ばかりしてきた
⦁ 傷つくことを平気で言われた、毎日傷つけられてきた
⦁ 自分はお母さんに諦められて育った
こういった発言を非常によく耳にします。
お子さん達がこんな悲しい思いをしなくて済むために。1人でもこういった悲しさやさみしさ・辛さを味わう子どもたちを減らすために。まずは、お子さんに接する時間が多い、いっぱいいっぱいでパンクしそうなお母さんの心のケアから行う。
お母さんも本当ははじめはただ一生懸命で、子育てに必死なだけだったというのがほとんどです。お母さんが罪悪感と強い責任感と孤独感で心を完全に壊してしまう前に――。
なぜ、お母さんはカサンドラ症候群になってしまったのか? そこから見ていく必要があります。