彼が私の部屋に忘れ物をするたびに――ほぼ毎訪問で忘れ物がある――インターホンに出て玄関まで行きロックを解錠して、一緒に物を探してという一連の流れは些細なことだけど頻繁になると面倒で、彼を嫌いになる前にどうにかしなければと思いました。
ある週末、私は彼を連れて下北沢の古着屋に向かいました。
胸に大きなポケットが2つついているボーリングシャツを購入し、彼にプレゼント。
ボーリングシャツというとイメージが湧きづらい人もいるかな?
いうなれば「胸に大きなポケットが1~2個」+「開襟のデザイン」+「裾がまっすぐにカットされている」シャツです。普通のシャツよりはややしっかりとしていて、アウターよりは軽いという感じ。
春~秋なんかには中にTシャツを着て、ボーリングシャツを重ね着したりもします。
服に置き場を、置き場に手順を
彼が忘れる物はもっぱら6つ。保冷バッグを除くと「身につけられるものばかり」でしたので、それら5つを収納する〔定位置を衣類〕に設けようと考えました。
- 薬用リップ…シャツの右胸ポケット
- ボールペン…シャツの左胸ポケット
- ジッポライター…パンツの右ポケット
- キーホルダー(車&家のカギ)…パンツの左ポケット
- 携帯電話…パンツのお尻の右ポケット
※彼は喫煙者でしたが私が吸わないため、タバコの持ち込みを禁じていました
彼が私の部屋を後にする際に玄関で、確認作業を挟むことになりました。
右手で自身の左胸ポケットをポン! と上から触ってボールペンがあることを確認したのを皮切りに→右胸ポケット→パンツの右ポケット→パンツのお尻の右ポケット→左手でパンツの左ポケット。
その際には「イチ…ニー…サン…」と声出し確認。
ポケットを押さえて数える作業はもちろん彼本人がするのですが、私もしっかり目視。
「5つある!」
「オッケ~気をつけてお帰り~」
これにより、この5つの物に関しては忘れ物が激減しました。ただし、彼がTシャツを1枚で着ることはほぼなくなりました。胸ポケットが2つないと不安になるのだそう(笑)
恋人関係や夫婦関係は終わりこそしましたが、ASDやADHDなど発達障害というものが日本ではまだまだ認知されていない頃に私が初めて「カウンセリングのようなものやアドバイス」を継続的に行っていたクライエントが彼でした。
LDと音位転換を持つ元義父と、ASDとADHDの合併がある元夫
彼との出会いが当時大学生だった私の方向性を決めたと言っても過言ではないため、とても貴重な付き合いでした。
後々に診察や診断を経てはっきりと分かるのですが、彼のお父上には「LD」「音位転換」があり、彼にははっきりと「ASD」と「ADHD」が併発してありました。
LD:学習障害
音位転換:(例)レディガガ → ガディーレガ
さて、あれから20年の時が経ち、私はクリニックに来院されるお子さんに「もしや…?」と思った際に聞くことがあります。