心療内科に勤めて20年になります。
何千人、何万人の人生をかなり近い距離でみてきました。時にはその方々の人生に伴走しながら、時には背後から見守り、時には手本を示すように少し先を歩いたり――。
そんななかで気づかされることはいくつもありました。
今日はそのなかのひとつ「友達がいたら、人生は本当に幸せか?」ついて私なりの見解を書きたいと思います。
あなたはどっち? 友達は必要? ひとりが楽?
人間は「友達が必要な人」と「ひとりの方が楽な人」の2つに分けられます。
友達が必要な5つのタイプ
友達が必要だと答える人はだいたい次の5つに分けられます。
⦁ たくさんの友達に囲まれていたい
⦁ 少数精鋭で十分
⦁ 親友が1人いればいい
⦁ 男友達といる方が楽
⦁ 女友達といる方が安心できる
ひとりの方が楽な5つのタイプ
ひとりの方が楽だと答える人に詳しくヒアリングをすると、
⦁ 会って話したりするのは苦手だけど、オンラインを通じて一定の距離感を保った付き合いができる「ネット友達」くらいでちょうどいい
⦁ 時々(安否確認や生存確認のように)近況報告をして、会うのは1年に1度くらいでなんら問題ない
⦁ 頻繁に連絡を取り合うことはしないけれど何かあればLINEやDMで交流し、2ヶ月に1度、2~3時間くらい食事に行ってお互いの話をするような付き合いが望ましい
⦁ 「友達がいれば…」と思うこともあるけれど、傷つけたり傷つけられたりするくらいなら1人でいるほうがいい
⦁ 本当に「ひとり」でいたい。自分以外の人の存在を感じると疲れる
おおよそこのようなカテゴリーに分けることができます。
「友達は必要」「ひとりが楽」と言っても、単純に言葉の通りではないということがこれでわかると思います。ではなぜ、大人や子どもに対して「友達をつくりましょう」と言うのでしょうか?
〔実録〕ひとりでいたいタイプだった
私は――子どもの頃、学校の先生や社会がさも当然のことのように「友達をつくりましょう!」「友達はたくさんいる方が幸せだよ」と言ってくるのが、面倒くさくてで仕方がありませんでした。
なぜなら、子どもの頃の私自身が「できれば、ひとりでいたいタイプ」だったからなのでした。
もちろん自己が確立されていない子どもでしたし、機能不全家族で育ちましたから、友達と一緒にいたいな(お家に帰りたくないな)と思うこともあったのですが、うちは母親が「猛毒親」だったため――長くなるのでここでは詳細を省きます
私と仲良くすると友達や友達のご家族に迷惑が掛かってしまっていたんですよね。だから、「友達はつくらない方が良い」という選択を小学校低学年の頃にはしていました。
無所属の気恥ずかしさ
嫌われていたわけではないけど、特にどのグループにも所属していなかったという回答が正しいかもしれません。
誰にもいじめられていないし、意地悪をされることもない。話しかけてくれるクラスメートもいれば、昨夜見たテレビの話で「くくく」と笑いあえたりもしました。
だけど、体育の授業で「2人1組になりなさい」と先生から言われると、私はあぶれていました。林間合宿や遠足で「グループを作りなさい」と先生がおっしゃると私はやっぱりあぶれていました。
正直にいうと、寂しくはなかったんです。でも恥ずかしかった。
「あいつあぶれてるじゃん」「あいついつもあぶれてるじゃん」そう思わているに違いない…と、恥ずかしかったんです。
ひとりでいることは寂しくないのに、「ひとりぼっち」だと思われるのは強烈に恥ずかしかった。「誰からも必要とされていない奴」と周りに認識されるのは子どもながらになかなかの苦痛でした(笑)
私が暮らしていた地域では今のように集団通学や集団下校がありませんでした。仲良しグループがおのずと小さな集団をつくり、仲良しの2人組が楽しそうに話しながら登下校。
そんななかにおいても私はやっぱり1人で通学。
さみしくはなかったけれど、すごく恥ずかしかった。
「友達がいない子」のレッテルを学校外の人たちからもつけられている、に、違いないという思い込みに縛られていたんだと思います。
ひとりはさみしいというレッテル
――という話をすると、ほとんどの患者さんはすごく驚かれます。
なぜなら私はゲラゲラとよく笑う明るいおばちゃん先生だからなのだそうです。とてもそんな風に「ひとり」で「さみしい」学生時代を送ってきた子に見えないんだそうです(笑)
ダイバーシティ、つまり『多様性』が叫ばれる令和6年においてもまだ、「ひとり」は「さみしい」という認識を持つ人が多いんだなあと不思議な気持ちになります。
「ひとりが楽」な人って、世の中、世間が思うよりもはるかに多いんじゃないかと臨床の現場に長くたつ私は思うのです。ただ、先に書いたように「ひとりが楽」という人達の中にも大きく分けて5つのタイプがいます。
⦁ 会って話したりするのは苦手だけど、オンラインを通じて一定の距離感を保った付き合いができる「ネット友達」くらいでちょうどいい
⦁ 時々(安否確認や生存確認のように)近況報告をして、会うのは1年に1度くらいでなんら問題ない
⦁ 頻繁に連絡を取り合うことはしないけれど何かあればLINEやDMで交流し、2ヶ月に1度、2~3時間くらい食事に行ってお互いの話をするような付き合いが望ましい
⦁ 「友達がいれば…」と思うこともあるけれど、傷つけたり傷つけられたりするくらいなら1人でいるほうがいい
⦁ 本当に「ひとり」でいたい。自分以外の人の存在を感じると疲れる
うちの子、友達がいないみたいなんですけど大丈夫でしょうか…
お子さんの相談、子育ての相談を受けることがよくあります。
⦁ 友達がいないのか
⦁ 友達が不要なのか
⦁ 友達はほしいけど、できないのか
⦁ 友達はできるけれど、なんからの理由があって離れてしまうのか
⦁ ひとりでいたいタイプなのか
これによって対処の仕方や深刻度は異なります。次回につづきます。