親の「兄弟姉妹格差」に隠された心理と、家庭の事情
こんにちは、カウンセラー真由です。
前回のコラムでは、「きょうだい差別」が多くの家庭で起こっていて、具体的にどんな場面で「差を感じた」のか、調査データや皆さんの声をご紹介しました。特に、生まれた順番や性別によって、親御さんへの不満を感じやすい人がいるというお話でしたね。

今回のコラムでは、なぜこのような「差」が生まれてしまうのか、その背景にある親御さんの心理や家庭の複雑な事情について、一緒に考えてみたいと思います。
日本の兄弟姉妹間における金銭格差・相続差別
前回触れた具体例の続きとして、特に大人になってから問題になりやすいのが、金銭的なサポートの格差です。
例えば、「跡取りだから」といった理由で、特定のきょうだい(特に息子さん)だけが進学や結婚、マイホーム資金などで厚い援助を受けている一方で、他のきょうだいにはほとんど援助がない、といったケースです。
なかには、「弟には家を買い与え、私の家族には何もしてくれない」「兄には1000万円、私には1万円しかくれなかった」といった、非常に大きな格差をつけられたというお話も。同じきょうだいなのに、どうしてここまで違うのだろう…と感じるつらさは、計り知れません。
日本の家庭では、兄弟姉妹への金銭的サポートに差が出る場面がいくつか報告されています。特に以下のようなケースで差が生じやすいとされています。




親や周りの大人が与える格差
また、子どもの頃の親や周囲からの何気ない発言や態度も、大きな傷として残ることがあります。
「妹は可愛いのに、お前は可愛くない」と繰り返し言われたり、兄弟げんかの時に自分ばかり怒られたり…。こうした経験が、「自分は愛されていない」「自分は価値のない人間なんだ」という自己否定的な気持ちにつながってしまうことがあります。
こうした差は、いつから始まり、いつまで続くのでしょうか?
「幼い頃からずっと」と言うかたもいれば、一時的なものだったという方もいます。親御さんが下の子を出産した直後から、上の子への態度が厳しくなることもあります。また、子どもの成長段階によって、親の関心が向く対象が変わることも。
手がかかる幼児期は下の子に、思春期で反抗的な時期は上の子に…というように、数年で親の「ひいき」の対象が入れ替わる場合もあります。
しかし残念ながら、その差別的な扱いが大人になっても変わらず、何十年も続いてしまうケースもあります。特に金銭的な格差や、愛情の偏りはずっと続き、「結局、ひいきされていたきょうだいが親の世話も財産も独占するのでは」といった新たな不満につながることもあります。
兄弟姉妹差別をする親の気持ちと背景
では、親御さんはどうして、きょうだいの間に差をつけてしまうのでしょうか。もちろん、意図的に子どもを傷つけようとしているわけではないことがほとんどだと思います。そこには、親御さん自身も気づいていない、様々な要因が絡み合っています。
専門家の方々は、その理由として、いくつかの点を挙げています。
そして、親御さん自身にも気質がありますから、どうしても「育てやすい子」「育てにくい子」がいたり、「親との相性」が良い子とそうでない子がいたりすることがあるそうです。
「上の子は聞き分けが良いのに、下の子は扱いが難しい」と感じたり、「どうしてもこの子とは気が合わない」と感じてしまう親御さんもいらっしゃるのです。
それは、親御さん自身の個性でもあります。「わが子なのに、好きになれない瞬間がある」ことに悩み、自分を責めている親御さんも少なくありません。
「こうあるべき」という親御さんの基準にフィットする子は受け入れやすいけれど、そこから外れる子には厳しく当たってしまうことがあるそうです。
「自分は母親失格だ」と思いながらも、どうしても特定の子を可愛く思えないという母親の声も紹介されています。
その影響で、「息子だから優遇する」「娘だから家のことは任せない」といった性別による差別が生まれることがあります。
最近ではこうした考え方は薄れつつあるようですが、一部の家庭では経済的な支援などでこうした差が今も存在しています。
また、親御さんが病気になったり、単身赴任になったりといった家庭環境の変化や、育児疲れ、夫婦間の問題といった親御さん自身のストレスも、特定のきょうだいにきつく当たってしまう原因になることがあります。
親に心の余裕がないとき、扱いやすい子に頼ってしまったり、扱いにくい子にイライラをぶつけてしまったりすることがあるからです。
「あんなに嫌だったのに、自分も同じことをしている…」と苦しむ親御さんもいらっしゃいます。
これらの理由から分かるのは、親御さん自身もまた、様々な心理や状況の中で葛藤しているということです。「よくないことだ」と分かっていながらも、止められない…そんな自分に苦しんでいる親御さんも少なくありません。
もちろん、だからといって不公平な扱いで子どもの心を傷つけることはあってはならないことですし、親御さんの事情がどうであれ、傷ついた子どもの気持ちをなかったことにはできません。大人になったからといって過去に受けた差別や不遇を忘れることもできませんしね。
次回は、この「きょうだい差別」によって心に負った傷と、その傷を癒やし、これからの人生を自分らしく生きていくための方法について、具体的にお話ししたいと思います。
【参考文献・出典】