「この人となら、将来も考えられるかも…」そう思っていた彼から、ある日突然、別れを告げられた。しかも、はっきりとした理由を教えてもらえないまま…。
もしあなたがそういった経験を繰り返していて、「どうしていつもこうなるんだろう?」「私の性格が悪いのかな…」と悩んでいるなら、この記事は少し役に立つかもしれません。
今回は、ADHD(注意欠陥・多動性障害)やASD(自閉スペクトラム症)の特性を持つ女性が、自分では気づきにくい「暗黙のルール」や「日常のちょっとした習慣」のズレが原因で、意図せず相手との間に溝を作ってしまうケースについて、実例を交えながら考えていきます。

1. 彼が気になった「日常の小さなこと」- A君とBさんのケース

薬剤師のBさん(28歳・ASD/ADHD併存)は、交際2ヶ月になる研究者のA君(29歳)と初めての旅行へ。順調に見えた関係でしたが、旅行後、A君から突然別れを告げられました。
「理由が知りたい」というBさんの強い思いを受け、A君が打ち明けたのは旅行中に気になったBさんのいくつかの行動でした。
- 使った後の浴室・洗面所: 髪の毛が散らばっていたり、シャンプーなどが元の場所に戻されていなかったりした。
- 濡れたバスマット: ぐしゃっとしたまま放置されていた。
- ホテルのベッド: チェックアウト時に、寝乱れたままだった。
これらは、A君にとっては「次に使う人への配慮」や「共同生活の基本的なマナー」として気になるポイントでした。(もちろん、人によっては「そこまで気にしない」という場合もあるでしょう)
2. A君が別れを決めた2つの理由
A君は、結婚して一緒に生活することを考えたときに、「自分で使った場所を整える」「次に使う人のことを少し想像する」といった日常の小さな積み重ねを大切にしたいと考えていました。
彼はBさんのことを、とても優しく素直な女性だと感じていました。実際にBさんは、困っている人がいればすぐに手を差し伸べるような、思いやりのある人です。
ただ、A君が求めていたのは特別な場面での優しさよりも、「一緒に暮らす上での、ごく当たり前の(と彼が感じる)生活習慣や配慮」だったのです。その点でBさんの行動は、A君にとって彼の価値観とは異なるものでした。
3. なぜBさんは気づかなかった? – 特性と「見えにくいルール」
Bさん自身、これまでの恋愛でも、理由は分からないまま早い段階で振られることが多かったそうです。そのため、「自分の性格に問題があるんだ」と長年思い込み、自分を変えようと努力してきました。
しかし、A君から具体的な理由を聞いて初めて、「そういうことだったんだ!」と気づきます。彼女にとってA君が指摘したようなことは、意識しないとできない、あるいは優先順位が低くなりがちなことだったのです。
ADHDやASDの特性の中には、
- 目の前のことに集中すると他が見えにくくなる(シングルフォーカス)
- 頭の中が多動で、やるべきことの優先順位付けや段取りが苦手
- 相手の立場や気持ちを具体的に想像するのが難しいことがある
- 暗黙のルールや「空気を読む」ことが苦手
といったものがあります。これらは決して「性格が悪い」からではありません。脳の特性によるものです。
そのため、Bさんのように「片付け」や「次に使う人への配慮」といった、「言葉にされていない期待」に応えることが意図せず難しくなってしまう場合があるのです。
4. 「当たり前」の罠 – なぜマナーのズレは見過ごされる?
こうした日常のマナーや習慣は多くの場合、
- わざわざ言葉で教えられる機会が少ない
- 家庭や個人によって「当たり前」の基準が違う
- 特性上、言葉にされないルールを察知するのが難しい
- 相手からすると「言わなくても分かるはず」と思われがち
よって、自分では気づかないまま、相手との間に認識のズレが生じてしまうことがあります。「どこが悪いか分からないまま振られる」という悲しい経験につながりやすいのは、このためです。
5. 結婚を考えると気になる? パートナーの「当たり前」
特に結婚を意識するようになると相手の金銭感覚や価値観だけでなく、こうした日常の習慣やマナーが気になる、という人は少なくありません。「一緒に生活していけるか」という視点で、無意識に相手の行動を見てしまうからです。
旅行などは、生活の一部を共有するため、普段は見えにくいお互いの「当たり前」が見えやすく、価値観のズレが表面化しやすい場面と言えるかもしれません。
まとめ
もしあなたが、「理由が分からないまま振られることが多い」と感じているなら、それはあなたの「性格」だけのせいではないかもしれません。もしかしたら、あなたと相手の「当たり前」と感じる習慣や、「気遣い」の方向性に違いがあったのかもしれません。
- 自分の「当たり前」を疑ってみる
「自分にとっては普通のこと」が、相手にとってはそうでない可能性を考えてみる。 - 相手の「当たり前」を知ろうと努める
全てを相手に合わせる必要はありませんが、「相手は何を基準にどこを大切にしているのか?」を知ろうとする姿勢は大切です。 - 信頼できる人に聞いてみる
自分の生活習慣や行動について、客観的な意見をもらうのも良い方法です。「これって、他の人はどうしてるのかな?」と聞いてみましょう。 - 【提案】価値観の「すり合わせ」を試みる
関係が深まる前に、「こういう時どうする?」といった日常の場面について話したり、前回の記事で紹介したような「自分取扱説明書」の考え方を応用して、「私はこういうことが苦手/得意」「こういう風にしてくれると嬉しい」といった情報を共有したりするのも有効です。
Bさんは、A君からの指摘をきっかけに、自身の特性とそれが日常行動にどう影響するかを理解しました。改善点に真摯に向き合われ、周囲からも「素敵になった」と言われるようになり、自信を取り戻しました。
幼馴染の女性からも「Bが使ったあとの洗面所は壁も鏡も床も、どこもかしこもびしゃびしゃで本当に酷かった。振られてしまったけど、言いにくいことを指摘してくれる優しい彼だったね」と言われたそうです。
大切なのは、「どちらの常識やマナーが正しいか」ではなく、「お互いが心地よく過ごせる妥協点を見つけること」です。 恋愛は時に自分の知らなかった一面や、改善点に気づかせてくれる機会を与えてくれます。振られた経験は辛いものですが、そこから学び、あなたらしい幸せな関係を築いていくことは必ずできます。
あなたのこれからの素敵な恋愛を心から応援しています🌱