不安や恐怖、そして虐待がもたらすもの~愛着の問題と脳への影響
「自分は発達障害ではないと思う。でも周囲が簡単にできることが、自分はできなかったりする。これは性格なのか? 努力が足りないのか? 友だちと比べて自分ばかりがダメな気がして、自信が持てない」
――そんな思いを抱えている方へ向けて、今回は愛着障害の問題やトラウマが脳に与える影響についてお話しします。
家庭環境と脳の変化~「傷つく脳」

家庭内で頻繁に夫婦喧嘩があったり、親子間の言い争いが続くような状況で育った子どもは、脳の「聴く力」に偏りが生じることがあります。騒動や怒鳴り声を無意識に避けようとするあまり、脳が過剰に緊張状態を続けてしまうのです。
また、家庭内で性的な暴力が見せつけられたり、直接的な暴力・虐待を受けた場合、脳の「見る力」を担う部分の機能が萎縮してしまうこともあります。「もう見たくない、これ以上は耐えられない」と心が悲鳴を上げるとき、脳はそのつらい記憶や刺激をシャットアウトしようとして変化を起こすのです。
傷つく脳・傷ついた脳の変形
- 暴言虐待
脳の聴覚野の肥大 - 性的虐待・DV目撃
視覚野の萎縮 - ネグレクト(育児放棄)
脳の中心部が委縮 - 厳格な体罰
前頭前野の萎縮 - ネグレクト気味、ネグレクトを含む愛着障害
線条体の働きが弱い(※1)
このように、長期間続くストレス環境は脳の形や機能に影響を与える可能性があります。もちろん、私自身も例外ではなく、だれしもが環境に左右されうるということです。

(※1)線条体の働きが弱いってどういう意味?
線条体の働きが弱まると、次のようなことが起こると考えられます。
- 体の動きの調節がうまくいかなくなる
- 動きがぎこちなくなったり、体をうまくコントロールできなくなったりする。
- やる気や楽しさを感じにくくなる
- いわゆる「ご褒美」に対する反応や感情(嬉しい気持ち・やる気)が弱くなることで、何かを頑張ろうという気持ちが湧きにくくなる。
- 選択や決断がむずかしくなる
- 何をするか、どう行動するかなどを決めるときに時間がかかったり、うまく判断ができない。
発達障害の特性にとても似た部分がありますよね? そうなんです、発達特性と愛着障害の特性って「判断がつきづらいほど似ている」ところが多いです。
※一般思春期(女児は14~5歳、男児は16~7歳)までに受けた虐待は『反応性愛着障害や解離』による多動性行動障害を発症させ、それはADHDやASDの特性と酷似しているところが少なくなく鑑別が難しい。
アダルトチルドレン・愛着障害の脳への影響

愛着障害やアダルトチルドレンの方は、特に「報酬」や「自己肯定感」に関わる脳の領域が影響を受けやすいといわれています。たとえば、
- 「Aを頑張ったら認めてもらえるかもしれない」
- 「Bでいい成績を取れば喜んでもらえるはず」
- 「これができればご褒美があるんじゃないか」
こうした『前向きなやる気』や『承認欲求』司る部分が萎縮している場合があり、自信を持ちにくかったり、達成感を得づらかったりします。
また、自己肯定感や喜びを感じる部分にも変化が生じていると、どうしても「自分には価値がない」「誰も自分の声を聴いてくれない」と思い込みやすくなるのです。
脳の変化は戻りにくい? だからこそ早期ケアを
- 機能不全な家庭環境で育った
- 親が自分の気持ちをほとんど受け止めてくれなかった
- 親の期待通りに生きるよう強いられてきた
- 自分はアダルトチルドレンや愛着障害かもしれない
こうした背景がある方は、脳の委縮や肥大、形の変化が起きている可能性があります。研究によっては、9歳以降になると脳の形状変化は元に戻りにくいと指摘されることもありますが、だからといって「もう遅い」「何もできない」というわけではありません。
早めのサポートが心と脳を守る

大人になってからでも、適切なカウンセリングやサポートを受けることで、自分の心の傷を理解し、新しい視点を得ることができます。
もし、今まさに苦しんでいる方がいらっしゃれば、一人で抱えこまず、専門機関や信頼できる人に相談してみてください。脳の機能を劇的に変えることは難しくても、心の状態や対処法を学ぶことで、より自分らしい人生を取り戻せる可能性は十分にあるのです。
あなたの心の傷は、あなたのせいではありません。
けれど、これからどう向き合っていくかは、あなた自身が選び取れるものでもあります。
つらい記憶や体験を抱える方ほど、早めのケアや理解ある支援を得ることがとても大切です。自分を責めるのではなく、どうか少しでも穏やかな未来へつながる一歩を踏み出してみてください。