人との適切な距離感と境界線|発達障害特性とバウンダリー〔前編〕

発達障害・特性
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日本で好まれる「関係性」と「距離感」

日本では相手との関係性に応じて『言葉遣いや接し方』『連絡頻度』『呼び方』『肉体的距離』などを臨機応変にふさわしく変えることが求められています。たとえば

  • 言葉遣い
  • 接し方や態度
  • 連絡頻度
  • 連絡をしても許される時間帯
  • 適した肉体的距離 ※パーソナルスペース
  • 関係性に適した呼び方

これらは、相手との関係性によって変えたほうが良い…どころではなく「変えるべきだ」「変えるのが常識である」とされています。

だから「タメグチキャラ」や「年上にもバンバン意見を言っちゃうキャラ」のタレントが出てくると、一部の若者からは熱い支持を得られても、多くの視聴者が「……なんか嫌だ」「好きじゃない」となってしまうんです。

日本って特にそういう国です。年上を敬い、年上を立てることが美しいとされる国。初対面の人や、関係性や信頼関係が築けていない相手には『現時点の関係性に合った言葉遣いや距離感をとうぜんのように重んじる』国。

とても美しい文化だと私自身は思います。日本の敬語は、相手の「存在そのもの」を敬うものですからとても尊いものだと思います。でも、発達障害の特性傾向があったり、知的に課題があるばあい(例:境界知能ほか)はそれが難しいことがありますよね。

関係性と距離感の具体例 ※横スクロールできます

項目 店員さん 友だち 同僚 勤務先の先輩・後輩 上司 役員レベル 取引先
言葉遣い 敬語(です・ます調) タメ口(親しい間柄なら) 基本敬語(親しくなればタメ口も) 先輩には敬語・後輩には適宜使い分け 常に敬語(丁寧語・場合により尊敬語) 常に敬語(丁寧語・場合により尊敬語) 常に敬語(丁寧語・場合により尊敬語)
接し方 丁寧で礼儀正しく フランクに接する 協力的・礼儀正しく 先輩には礼儀正しく・後輩には優しく声掛け。見守りながら適切にサポート マナー本に載っているように礼儀正しく、失礼のない態度で。 マナー本に載っているように礼儀正しく、失礼のない態度で。 信頼関係や協力関係ができても、原則、接し方はかえず。
連絡頻度 個人的な話をするための連絡はNG 頻繁でもOK(相手の性格やライフステージに応じて考慮) 適度(業務に関係がなければ少なめ) 適度(業務に関係があれば) 必要な時のみ 必要な時のみ 必要な時のみ
連絡をしても許される時間帯 営業時間内が鉄則 個人間の自由 勤務時間内が基本 勤務時間内が基本 勤務時間内が基本 勤務時間内が基本 勤務時間内が基本
肉体的距離(パーソナルスペース) 手を伸ばしても触れない距離(1m以上)・基本的に距離を取る 肩が触れ合う程度の距離(50cm程度) 手を伸ばせば触れられる距離(70cm程度) 手を伸ばせば触れられる距離(70cm程度) 1〜1.5mの距離を保つ(対面時は机を挟むことが多い) 1.5m以上の距離を保つ(対面時は広めのスペースを取る) 1.5m以上の距離を保つ(名刺交換時は適切な距離を意識)
関係性に応じた呼び方 ○○さん 名前・あだ名 ○○さん 先輩:○○さん・後輩:○○くん/さん ○○さん ○○さん ○○様(取引先)

友だちであったとしても、お互いのライフステージや人生のイベントにより距離感をかえなければならないことがあります。

ライフステージ・人生のイベントとは?
年代別の生活状況のこと。以下は一例であり個人差による

20代: 就職/転職/結婚/出産 
30代: 仕事の安定/子育て/家の購入/キャリアの転換期 
40代: キャリアのピーク/子どもの成長(進学など)/介護の始まり/健康への意識 
50代: 子どもの自立/親の介護/定年準備/自身の健康問題やライフスタイルの見直し

他者との境界線がない人・距離感が“バグ”ってる人への世間の評価

境界線や距離感が正しく取れない場合、以下のような評価を受けることがあります。

  • 非常識で「怖い」
  • よそよそしい、冷たい
  • 敬語が使えない、無礼
  • 距離感がおかしい、馴れ馴れしい
  • 距離感が「バグ」ってるから親しくなると面倒が起こりそう

特に日本では、自他との間にある境界線を重視する文化があるため、こうした評価を避けるためにも、適切な距離感を持つことがきわめて重要です。

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個人差が大きい距離感の難しさ

適切な距離感を越えて親しげに接されると「圧を感じる」「恐怖を感じる」「要注意」「図々しい」と嫌悪され、逆に距離をとりすぎると「丁寧だけどよそよそしい」と寂しさを感じさせてしまう。

  • たとえば、男性の多い家族で育つと「おおざっぱ・雑・がさつ・ぐいぐいくる」と距離感や接し方を非難されることがあります。
  • たとえば、自然豊かでご近所さんとの交流が頻繁な環境でのどかに育つと「距離が近い・親しげにしすぎ・フレンドリーと馴れ馴れしいの差がない」と言われることもあります。
  • たとえば、自己主張するのが当然な外国で育つと「自分を出し過ぎ・自己評価が高すぎ・控えめじゃない・わがまま・距離が近い・ボディタッチが多い」などと眉を顰められることもあります。
  • ASDやADHDなど発達障害の特性傾向があったり、境界知能があるばあい「相手と自分の境界線を見極め、適切な距離を正しく見定める」ところに難しさをおぼえる人も多いでしょう。
  • また、過度な緊張やプレッシャーの強さで、無意識に距離感が近づいたり悪意なくタメグチになってしまう人もいらっしゃいます。


ではどうすればいいのでしょうか? 後編では具体的な対策を紹介します。

バウンダリー(Boundary)

英語で「境界」「限界」を意味する言葉。「バウンダリー」という言葉は日本でも使われることが増えてきて、特に人間関係や心理学の分野でよく使われます。

📌バウンダリーの意味

  1. 物理的な境界 → 「国境」「フェンス」「エリアの区切り」など
  2. 人間関係における境界(心理的バウンダリー) → 「他人と自分の間にある適切な距離感」
  3. 仕事・プライベートの境界(ワークライフバランス) → 「仕事とプライベートを分けること」
  4. スポーツの境界線 → 「フィールドの端」「ルール上のライン」

🧠 心理学でのバウンダリー(人間関係の境界)

人間関係のバウンダリーとは、「自分と相手の間にある適切な線引き」 のこと。

例えば…

  • 適切なバウンダリーがある
    • 自分の意見を尊重しつつ、相手の意見も尊重する
    • NOと言うことができる
    • 無理に人の問題を引き受けない
    • 他人の気持ちに流されず、自分の感情を大切にする
  • バウンダリーが弱い(境界が曖昧)
    • 他人の期待に応えすぎてしまう
    • 断れない、無理をしてしまう
    • 他人の感情に引きずられやすい
    • いつも他人に振り回されてしまう
  • バウンダリーが強すぎる
    • 他人と距離を置きすぎる
    • 人に頼るのが苦手
    • 感情をあまり表に出さない
    • 相談することができず、一人で抱え込む

💡 バウンダリーを守るためには?

  • 自分の気持ちや価値観を大切にする
  • 断ること(NOと言うこと)を恐れない
  • 相手の問題と自分の問題を区別する
  • 自分の時間・エネルギーを守る意識を持つ

日本ではとくに「相手に合わせること」が重要視されがちです。でも、自分の心をと体を守るために「境界線を引いて相手と接すること」「バウンダリーを意識すること」はとても大切です。

わがままや自分中心という悪い意味でなく、自分を大切にまもるために『自分軸』で生活を送れますように。

✍オンラインカウンセリング「あたらしい今日」主宰・カウンセラー真由

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