【発達障害と仕事・業種別】事務職とIT技術職のリアルな困難と配慮例【第4話】

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【第4話】発達障害の人が事務職・IT職で困ることは?

「事務の仕事、細かい作業が多くてミスが怖い…」
「ITエンジニアだけど、チームの雑談が苦手で孤立しがち…」

発達障害のある方が働く上で共通して抱える困難や求める配慮はありますが、実は業種によってその現れ方や必要なサポートは少しずつ異なります。今回は、人気の高い「事務職」と専門性を活かしやすい「IT技術職」に焦点を当て、それぞれの職場で具体的にどのような困難があり、どんな配慮が求められているのかを詳しく見ていきましょう。

これまでのコラムでは、発達障害のある方が職場で共通して感じる困難や、求める配慮の全体像についてお伝えしてきました。ここからはより具体的に、業種ごとの特徴とそこで働く当事者の方々が直面しやすい困難、そして求められる支援策について掘り下げていきます。

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【業種別レポート①】事務職で多く見られる傾向

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今回は、障害者雇用でも人気があり、また一般雇用でも多くの方が活躍されている「事務職」と、専門スキルを活かしやすいとされる「IT・技術職」を取り上げます。

背景 意外と複雑? 事務職のリアル

一般企業の事務職は、比較的ルーティンワークが多く、落ち着いて仕事ができそうなイメージから発達障害の特性傾向のある方にも人気の職種です。

しかし、実際には「思ったよりも業務が複雑で、マルチタスクが多くて辛い」という声も少なくありません。電話応対、来客対応、データ入力、書類作成、ファイリング、備品管理、庶務雑務…と、事務職が担う業務は非常に幅広く、細やかさも求められるため、発達障害の特性によっては困難を感じやすい場面も多いのです。

事務職で当事者が感じる主な困難

困難の種類具体的な状況・課題
マルチタスクの連続ひとつの作業中に電話が鳴り、それが終わると別の書類処理を頼まれるなど、作業の切り替えが頻繁。複数の業務を並行すると抜け漏れやミスが増えやすい。
対人応対・コミュニケーション電話や来客対応、社内での調整など、会話力や対人スキルが求められる。敬語や社交辞令に気を遣いすぎて疲れたり、電話メモを取り損ねたりしやすい。
ケアレスミスの許されなさデータ入力ひとつとっても「1文字の誤りが大きな問題になる」ことがある。注意力が散漫になりがちな特性を持つ人にとって、長時間の細かい入力や帳票チェックはミスとの闘いになりやすい。

当事者が事務職で求める支援・配慮例

業務手順の標準化とマニュアル化
  • ひとつひとつの事務作業の手順をチェックリスト化する。
  • 自分専用の簡易マニュアル(よく間違えるポイントや注意点を追記したもの)を手元に置いて作業できるようにする。
タスク管理ツールの活用
  • やるべき仕事とその優先順位を、タスク管理アプリやスケジュール表などで「見える化」する。
  • 締切や予定を共有カレンダーに入力し、リマインダーを設定する。
電話対応などのフォロー
  • 電話の内容をメモし、後で確認できる仕組みを作る(例:録音機能の活用、取次ぎ内容をチャットで補足)。
  • 可能であれば、電話ではなくメールやチャットでのやり取りに置き換えることを検討する。
得意な業務への役割分担
  • 事務作業の中でも、本人の強み(例:正確性、集中力、丁寧さなど)が活かせる業務を中心に担当させる。
  • たとえば、データチェックが得意な人にはその業務を多めに、コミュニケーションが得意な人には受付対応を多めにするなど、柔軟な役割分担を考える。

「一度に一つずつ」「見える形で」「自分のペースで」仕事ができる環境づくりが、事務職で力を発揮するための重要なポイントです。「自作マニュアルを確認すれば失敗リスクを減らせるし、発達障害の特性があっても事務職は不可能ではない」という前向きな声もあります。

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【業種別レポート②】IT・技術職で多く見られる傾向

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IT業界は、プログラミングなどの専門スキルを活かしやすく、論理的な思考が得意な発達障害の特性のある方にとっては、成果を出しやすい職種と捉えられがちです。

背景 専門性とコミュニケーションの狭間で

特に自閉スペクトラム症(ASD)の特性とIT分野の親和性に注目し、積極的に人材を採用する企業もあります。

しかし一方で、「チームでの開発作業になじめず孤立してしまった」「在宅勤務で誰とも話さず不安になった」といった声も聞かれ、コミュニケーション面での課題が浮き彫りになることもあります。

IT職で当事者が感じる主な困難

困難の種類具体的な状況・課題
チームコミュニケーションの齟齬冗談や社交辞令、言葉の裏にある意図を読み取るのが苦手で、会話でストレスを感じやすい。朝礼の雑談に参加できなかったり、同僚の言葉を誤解したりして孤立感を深めることがある。
「ほうれんそう」(報連相)が苦手仕事の進捗報告や、困ったときの相談を適切なタイミングで行うのが難しく、問題を一人で抱え込んでしまうことがある。逆に、話が長くなりがちで要点が伝わりにくい場合もある。
業務指示・要件定義の不明瞭さシステム開発などでは、指示や要件定義があいまいだと、何をどう作ればいいのか分からず混乱しやすい。特に急な仕様変更や追加要望に柔軟に対応するのが難しい
在宅勤務(テレワーク)時の孤立自宅で自分のペースで働けるのはメリットも大きいが、直接的なコミュニケーションが減ることで、相談相手がいなかったり、社会とのつながりが希薄になったりして、孤独感や不安を感じることがある。生活リズムが乱れることも。

当事者がIT職で求める支援・配慮例

テキストベースのコミュニケーションの許容
  • 口頭でのやり取りよりも、チャットやメールなど文字でのコミュニケーションを基本とする。
  • 会議も、対面だけでなくチャットでの議論や議事録共有で代替できる部分は取り入れるなど、本人が発言しやすい手段を認める。
定期的な声掛け・メンタリング
  • 報告や相談が滞りがちな傾向を考慮し、上司や先輩が定期的に進捗や困りごとがないかを確認する(※メンタルチェックも兼ねて)。
  • テレワーク中でも週に1回はオンラインでの1on1ミーティングを設定するなど、孤立を防ぎ、助言できる機会を作る。
要件や仕様の明確化
  • 抽象的な指示を避け、タスクごとに具体的なゴールや期待される成果物、判断基準などを明確に伝える。
  • 仕様変更があった場合は、変更点や理由を文書で明確に示し、変更履歴を管理する。
作業環境の配慮(オフィス・在宅)
  • オフィス勤務の場合は、集中できる静かな席を用意したり、在宅勤務を許可したりする。
  • テレワークが中心で人との接点が少ない場合には、チームの一体感を感じられるよう、オンラインでの雑談タイムや定期的な出社日を設けるなど、本人の希望に応じて柔軟に対応する。

IT・技術職では、本人の高い専門スキルを活かしつつ、コミュニケーション方法を工夫し、孤立させないためのフォロー体制を整えることが、定着と活躍の鍵となります。

「明確な指示や受け答えがしやすい文字コミュニケーションの方が適しており、在宅勤務で自分のペースを作る方が良い」という報告もありますが、同時にチームとのつながりを保つ工夫も大切です。

ASD傾向のある方のなかには「本当にひとりで集中して仕事をしたい。指示が明確であればとくだんコミュニケーションは必要ない。※仕事面において孤独やさみしさをまったく感じない」という人達もおります。

コミュニケーションだって必要だよね💦 ZOOMで雑談しなきゃ💦 などと気をまわしすぎる必要はありません。業務報告や業務確認時間を30分/1日または隔日に留めるといったミーティング形式で十分な人達もいます。

誰もが皆同様に孤独やさみしさを感じるわけではない、という認識があると良いかもしれませんね!

まとめ

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今回は、事務職とIT・技術職という2つの業種に焦点を当て、ADHDやASD・LDなどに代表される発達障害のある方が抱えやすい困難と、求められる配慮の具体例をご紹介しました。

同じ「発達障害」であっても、職種や個人の特性によって困りごとは様々です。大切なのは、それぞれの状況に合わせたきめ細やかな対応と言えるでしょう。

次回は、「接客・サービス業」と「公務員(教職・官公庁など)」のケースについて、同様に具体的な困難と配慮のポイントを見ていきます。これらの職種ならではの課題や、それを乗り越えるためのヒントをお伝えします。

✍オンラインカウンセリング「あたらしい今日」主宰・カウンセラー真由

情報ソース


発達障害・特性
私が書きました
一 真由

オンラインカウンセリング『あたらしい今日』主宰
心とからだの不調に詳しいお節介カウンセラー

心療内科領域に強いカウンセラーとして、生きづらさを抱える方々に寄り添いながら、誰もがいつからでもリスタートを切り「新しい今日」を迎えられるようにと願って、情報発信を行っています。ブログでは機能不全家族・毒親問題・子育てSOSを多く扱っています。

気軽に話してもらえるように。「独り」にならなくてすむように。人生に伴走することを大切にしています。通称カウンセラー真由

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