前回の記事では、私自身の新人時代にかなりの嫌がらせを受け、体に異常を致すほど苦しんだという実体験にも触れました。
職場で「仕事を教えてもらえない」陰湿ないじめとは?
職場での「仕事を教えてもらえない」という嫌がらせは、精神的に非常に辛いものです。
周りの同僚が仕事に励んでいる中で、自分だけが仕事を与えられず、取り残される感覚は、強い孤立感を引き起こします。このような状況は、立派ないじめであり、犯罪行為に等しいと感じる人も少なくありません。
しかし、全てのケースが「いじめ」や「意地悪」によるものとは限りません。今回は、仕事を教えてもらえない理由について、いじめ以外の要因も含めて考えてみましょう。
教えたくても教えられない「キャパオーバー」の場合
職場の上司や先輩が育休や病欠などで他の業務をカバーしているために、自分の仕事だけで手一杯になっている場合、教える時間を確保することが難しくなります。
このような状況では、教えたいという気持ちはあっても、物理的に時間や精神的な余裕がないことがあります。
育休の人や病欠の人達のカバーで仕事量が2倍、3倍になっているケース。
自分の担当外の仕事を請け負った場合、その肉体的負担と精神的負担は9倍と言われています。
教えたくても教えられない「時期が悪い」の場合
特に年度末や新年度の繁忙期には、部署全体が忙しく、社員一人ひとりに余裕がなくなります。
大企業ではOJTがしっかり組まれている場合もありますが、零細企業や中小企業では、新入社員の教育に時間や手間をかけることが難しいこともあります。
「見て覚える」文化が根付いている職場
日本の零細企業や家内工業では、昔ながらの「見て覚える」や「背中で学ぶ」といった教え方が美徳とされることがあります。
しかし、この教え方は、全ての人に適しているわけではありません。特に、発達障害の特性を持つ人にとっては、抽象的な指示や臨機応変な対応が難しいことがあります。
「見て覚えろ」この教え方は、人を選びます。
- 1を聞いて(見て)、臨機応変に創意工夫で9できる人もいれば、そうでない人もいます。
- 発達の凸凹などにより、臨機応変が苦手な人や、指示されたことならきっちりとこなせる人もいます。
- 「背中に学ぶ」「見ておぼえる」といった抽象的なものを理解しづらい特性を持つ人もいます。
教える側に「人それぞれ」「得手不得手は誰にでもある」という概念が欠けている場合、そのしたで仕事をおぼえなければならない人たちは相当苦労するでしょう。
- 「仕事を教えてもらえない」
- 「教えてもらいたいけど、たずねてはいけないような雰囲気がある」
- 「質問をしてみたけれどぶっきらぼうな対応をされてしまったので、怖い」
などと感じてしまうことも少なくないでしょう。
いじめや意地悪以外の理由がある場合
「仕事を教えてもらえない」という状況は、必ずしもいじめや意地悪とは限りません。
教育係のキャパオーバーやタイミングの問題、さらには「見て覚える」文化の影響などが考えられます。しかし、これらの要因が複合的に絡み合うことで、本人にとっては「いじめ」と感じられることもあるでしょう。
口調や態度がぶっきらぼうなだけで、「人見知りだけど心は優しい人」も少なくありません。けれど人にとってはそれさえも、いじめられている・疎外されていると感じてしまうかもしれません。
目に見えているものだけがすべてではないことも多いです。
発達障害特性との関連
- 発達障害の特性により、相手の言動や態度をそのまま受け取る傾向がある場合、いじめと誤解してしまうこともあります。
- また、仕事を教えてもらえない理由が、勤怠の問題や同じミスの繰り返しなど、特性によるものであることも少なくありません。
これ自体はリスクヘッジであり、いじめではありません。
しかし、これをきっかけにいじめや嫌がらせが発生することは絶対に避けなければなりません。
「仕事を教えてもらえない」という状況に直面したとき、それがいじめや意地悪によるものなのか、それともやむを得ない事情があるのかを冷静に見極めることが大切です。
そして発達障害特性を理解し、職場でのサポートが必要であることを忘れず、社会全体が多様な特性を尊重し合える環境がいちにちも早く整うことを願ってやみません。