ADHDのオンライン掃除とお片付け❹
一般に出回っている片付け方法では「片付け」と「整理整頓」がセットとして扱われがちですが、実はこれが苦手な人にとっては大きな負担となることがあります。この記事では、それぞれの違いと重要性を解説します。
「片付け」と「整理整頓」の違い
1.片付け
「片付け」とは、散らかっている物をひとまず決まった場所に戻し、空間をスッキリと整えることです。例えば、食べ終わった食器をキッチンに戻すなど、散らかりを解消して一時的な整頓を行うのが目的です。
2.整理整頓
「整理整頓」は、物を使いやすく配置し、長期的に維持できる仕組みを作ることです。引き出しや棚に物を優先度や頻度に応じて配置することで、持続可能な環境を作るのが目的です。
3.まとめ
- 片付け:短期的な解決として物を元の場所に戻すこと。
- 整理整頓:長期的な管理がしやすい仕組みを構築すること。
この違いを意識することで、片付けと整理整頓をうまく使い分け、日常生活の中で快適な環境を保つことができます。
ADHD傾向に多く見られる苦手分野~空間認知能力+構造化能力
- 片付け:空間認知能力が求められ、物の位置関係を把握して戻す作業が必要です。
- 整理整頓:論理的な構造化能力が求められます。物を分類し、整理して維持するための計画力が必要です。
整理整頓に必要な「構造化能力」4つのスキル
「整理整頓」は、論理的な思考や計画力が関わる作業です。具体的には、次のような能力が求められます。
整理整頓に必要な4つのスキル
- 論理的な思考力:物を分類し、適切な配置を判断する力。
- 計画力・構築力:長期維持を見据えた配置戦略。
- 分類・仕分け能力:カテゴリー分けやグループ化。
- 持続力・習慣化:整理整頓を維持するための習慣作り。
もっと詳しく知りたいかた向けの解説 ※飛ばしてOK
1.論理的な思考力
整理整頓では、物を分類して管理するための判断が必要です。何を残し、何を処分するか、またどういった順序で物を配置すれば使いやすいかを考える力が求められます。
2.計画力・構築力
整理整頓では、長期的に維持できるような仕組みを作る必要があるため、空間や物の配置を計画的に構築する力が重要です。例えば、使用頻度の高いものは手の届きやすい位置に配置するなど、配置の戦略を立てる力が必要です。
3.分類・仕分け能力
物をどのカテゴリーに分け、どのグループに属するかを決める能力も整理整頓に必要です。この分類力により、物が見つけやすく、使いやすくなります。
4.持続力・習慣化の能力
整理整頓は一度行って終わりではなく、定期的に見直しや管理が必要です。そのためには、継続してその状態を保つための習慣化や持続力も重要です。
「片付け」が瞬間的な空間認知能力を要するのに対し、「整理整頓」は論理的な思考力や計画的な構築力、分類・仕分け能力などを通じて、長期的に整った状態を維持するための計画的なスキルが求められると言えます。
カウンセラー真由のリモート片付けレッスン
私のリモートレッスンでは、上記の〔1~3〕をサポートし、〔4〕は週1回のセッションで一緒に実践します。特に片付けや整理整頓が苦手な人にとっては、〔1~3〕のプロセスを1人で考えるだけでも脳が疲れて投げ出したくなってしまうかもしれません。
私のモットーは「得意を伸ばし、不得手には適切なサポートを」。
不得手に過剰な時間を割く「努力・根性・精神論」な昭和的教えは正直言って時代錯誤も甚だしいし、得策ではありません。本人も周囲もストレスとトラウマが増え、「苦手なことが大嫌いなこと」になってしまっては本末転倒。
無理に頑張らず、頑張ることを必要以上に強制せず100点ではなく、「70点」を継続できるように。これがだいじ!
発達特性による片付けと整理整頓の課題
ADHDやASDなど発達障害特性の観点から見ると、「片付け」と「整理整頓」は異なる難しさを伴い、それぞれ異なる側面での支援や配慮が必要になります。例えば――
- ASDの特性が強いと、物の分類やルールの作成にこだわりすぎてしまう場合があり、完璧を目指すあまり整理整頓がかえって複雑になってしまうことがあります。
- ADHDの特性が強いと、順序立てて整理することや、ものを一定の場所に保つ計画性が難しい場合が多く、「整理した状態を維持する」という行動に集中し続けることが苦手です。
- また、思いつきで物をあちこちに置いてしまい、いつの間にか散らかってしまうこともあります。
ADHDさん向けの4つの片づけ整理術って本当にオススメ?
- 視覚的サポート:ラベルや色分けで整理方法をわかりやすくする。
- シンプルなルール:手順や基準を簡潔にする。
- エリアごとに片付け:小さな範囲で少しずつ進める。
- 置き場所を決める:位置や配置を箱や棚で明確に細かく分ける。「物にも住所を!」
でも、実際には?
- 視覚的サポート:物ごとにラベルを貼ったり、色分けを計画するには「準備の工夫」「全体の把握」がまず必要で、最初の段階でつまずきやすいこともあります。
- シンプルなルール:手順や基準をシンプルにすることも勧められますが、手順を守り続けるのも一苦労。気が散りやすい特性がある場合、途中で集中が切れやすく「やりかけ」の状態が点在することも。
- エリアごとの片付け:小さな範囲ごとに片付けを進めると取り組みやすいとされますが、途中で他の場所が気になってしまい、最初のエリアを終える前に次の場所に移りたくなることもあります。
- 置き場所を決める:箱や棚で物の位置を明確にする「物にも住所を!」な方法です。しかしこの配置を維持するには分類や計画力が必要となり、維持することが大きなハードルになることも少なくありません。
このように一見すると「簡単にできそう」「どうにかなりそう!」と思える片づけ整理術ですが、実はひとつひとつに隠れたハードルもあります。個々人の特性に寄り添った片づけ整理術で、週に1度の習慣化を。
目指すのは、70点がキープできるお部屋!