前回のコラム『共感力の欠如は傾聴力の欠如、人が「共感してほしい」と感じる時6選』では、共感力の欠如が対人関係に与える影響を解説し、話の中心を相手に置く重要性について触れました。また、人が共感を求める6つの時についても紹介しています。
共感できないという悩み、共感されないという悩み
今回のコラムは、共感力が低いことで対人関係につまづきやすい人にお勧めしたい『 相手を肯定する力』と『 相手を承認する力』についてまとめました。
次回は、共感力が備わっていなかったり、なんらかの理由で他者に共感することができない・難しい人たちが社会的窮地に立たされている実例をまとめています。
相手を肯定する力「肯定力」とは?
相手の存在や考えを前向きに受け入れ、尊重する力のことを指します。
これは他者の気持ちや意見を冒頭から否定せず、まずはそのまま受け止めることで信頼関係を築き、相手が安心して自己表現できる環境を提供するために重要なスキルです。
共感的な理解
相手の意見や感情を頭から批判せず、その人の視点に寄り添い、「そうなんだね」「なるほど」「あなたはそう考えたんだね」と先ずありのまま受け止める姿勢が基本です。
ポジティブなフィードバック
小さな成功や努力も具体的に認めて伝え、相手のモチベーションを高める役割を果たします。
尊重の姿勢
自分と異なる考えや価値観を持つ人も尊重し、その多様性を理解しようとする姿勢が肯定力の重要な要素です。
肯定力は家庭や職場など、あらゆる人間関係で相手が「受け入れられている」と感じる大切な要素です。この力を持つことで信頼関係が深まり、互いの成長を支え合える環境が築かれます。
相手を承認する力「承認力」とは?
相手の行動や成果を具体的に評価し、感謝や賞賛を通じて相手の価値を認める力です。
承認力は、相手の「行動」や「結果」に注目して、それを評価・賞賛することで相手の自己肯定感やモチベーションを高めます。
これは、相手の「存在」そのものを尊重する肯定力とは異なり、具体的な達成や努力を認めることに焦点を当てています。
承認力の3つの特徴
具体的な行動や成果に焦点
承認力は、相手が成し遂げたことや努力した点を具体的に評価します。
例えば、「プレゼンの準備、よく頑張ったね」「結果を出してくれて助かりました」「(テストの点数はともかく)今回はよく勉強したね」「30分も集中して宿題ができて頑張ったね」のように、行動や結果を具体的に言葉で伝えます。
モチベーションを高める
承認力を通じて評価や賞賛を受けることで、相手は自分の努力が認められていると感じ、さらに意欲的に取り組むことができます。
相手の成長を支える
成果や行動に対する評価を通じて、相手が自己成長に前向きになれる環境をつくります。
肯定力との違い
- 承認力は、相手の「行動や成果」に焦点を当て、それを評価して伝える力。具体的な達成や努力をしっかり認めることで、相手の自信や成長意欲を高めます。
- 肯定力は、相手の「存在や意見」をそのまま受け入れ、否定せずに尊重する力。相手の価値観や感情を認めることで、安心感と信頼関係を築くのに役立ちます。
このように、承認力は相手が行動によって成し遂げたことや努力したことに注目し、肯定力は相手そのものや意見を肯定的に受け止める力として、それぞれの側面から人間関係をサポートします。
共感力の低さは相手を認めることで補う
心療内科に20年勤めておりますので、共感力の低い相手に苦しんできた患者さん、自らの共感力が低いことで社会的に窮地に立つことになり苦しむことになった患者さん、どちらの治療/カウンセリングも行います。
立場は異なれど両者ともに「相手もしくは自身の共感力の欠如」が原因で非常に苦しんでおられます。
例えば親に共感力の欠けがあると、子どもはどのように育つでしょう? そして社会人になった時にどのような影響が出るのでしょうか? 詳しくは次回に続きます。