夏休み~9月、受験シーズンが具体的に視野に入ってくると、親御さんからお子さんの「万引き」に関連する相談が一気に増えます。
お母さんに連れられて外来にくるお子さんも増えます。とてもセンシティブな問題なので、こちらもぴりっと身が引き締まります。
親御さんとしては当然の感情として「お子さんの万引きを止めたい」「してはならないことだと教えたい」という思いが先に立ちます。私も普段は母親ですからそのお気持ちは痛いほどわかります。
しかし、行動には必ず理由があります。叱責や説得で万引きが止まれば、それに越したことはありません。しかし叱責や説得を経て「手口が巧妙になるケース」は非常に多いです。
小学生・中学生が万引きをしてしまう理由10
1.好奇心からの行動
⦁ 新しい経験への興味:初めてのことを試してみたいという純粋な好奇心から。
⦁ ルールや限界のテスト:自分がどこまで許されるのか、社会的な境界を探ろうとする行動。
2.友達の影響(仲間意識の強さ)
⦁ 仲間外れを恐れる:グループに入っているために、友達の行動に従ってしまう。
⦁ 競争心や影響力:友達に負けたくない、またはリーダーの言うことを聞くことで自分の位置を保とうとする。
3.スリルを感じたいという気持ち
⦁ 禁止されたことを試す刺激:ルールを破ることによるスリルや興奮を楽しむ。
⦁ 日常生活の退屈さを埋める:何か新しい、刺激的な体験を求めている。
4.物欲の制御が難しい
⦁ 自己コントロールの欠如:欲しいものが手に入らないときに、我慢できずに行動に移してしまう。
⦁ 物への執着:特定の物がどうしても手に入れたく、強い欲望に駆られる。
5.家族や友達からの注目を引きたい
⦁ 親の関心を引くため:親の注意を引くため、問題行動を起こしてしまうことがある。※親が自分ではない他方に意識を向けている(ケアが必要な他の家族やきょうだい、離婚問題や夫婦仲の悪さ、仕事、親の婚外恋愛など)
⦁ 友達の注目を集めたい:ヒーローになりたい、または友達に一目置かれたいという願望。
6.家庭環境やストレスの影響
⦁ 家庭内の問題:家庭内の争いや親の不和が、子どもの不安やストレスを高める。
⦁ 経済的困難:家で物が買えない状況から、物を盗むという行動に走ることがある。
⦁ 学校や社会でのプレッシャー:成績や進学、受験、友達関係で高いストレスを感じており、心の逃げ場を求めて万引きをしてしまう。
⦁ 虐待や無視:家庭内での虐待や無視(ネグレクト、スマホネグレクト)が原因で、自分の価値を確かめたいという思いから。
7.罪悪感を感じにくい
⦁ 道徳心の発達途上:ルールや他者の感情への理解がまだ十分でない。
⦁ 共感力の欠如:他者の気持ちを想像する力が弱く、罪悪感が薄い場合。
8.社会的ルールや法律の理解不足
⦁ 法的な知識不足:万引きが法的に重大な問題であることを認識していない。
⦁ 倫理教育の欠如:家庭や学校での道徳教育が十分でないため、ルールや規範を軽視してしまう。
9.感情や欲求のコントロールが苦手
⦁ 衝動的な行動:感情が高ぶった時にすぐ行動に移してしまうことが多い。
⦁ 感情を抑えきれない:怒りや不満が高まり、それを抑えることが難しい。
10.イジメや脅迫に関する問題
⦁ イジメによる強要:他人から「盗んでこい」と脅されている状況や、イジメっ子に従わざるを得ない。
⦁ イジメを避けるための譲歩:物を差し出すことでイジメを避けようとするため、万引きに走る場合がある。
上記10個のなかから、治療やカウンセリングなど専門的な支援が必要な可能性が高い状況のものを以下にピックアップしました。
【要注意】専門的な治療が必要な4つの原因と提案
6.家庭環境やストレスの影響
⦁ 家庭内の問題:家庭内での争いや親の不和が原因で、子どもが不安やストレスを抱えている場合、カウンセリングが役立ちます。
⦁ 経済的困難:経済的な問題に伴うストレスが子どもの行動に影響を与える場合、家族全体の支援が必要です。
⦁ 学校や社会でのプレッシャー:学業や友人関係のストレスから万引きが起きる場合、スクールカウンセラーや心理療法が適切です。
⦁ 虐待や無視:虐待やネグレクト(無視)が原因の場合、医療や心理療法、家庭内のサポートが必要です。
7.罪悪感を感じにくい
⦁ 道徳心の発達途上:罪悪感を感じにくい場合、心理カウンセリングを通じて倫理観や共感力を育てるサポートが求められます。
⦁ 共感力の欠如:共感力の欠如により他者の感情を理解できない場合、長期的なカウンセリングや治療が必要になることがあります。
9.感情や欲求のコントロールが苦手
⦁ 衝動的な行動:感情や衝動をコントロールできない場合、行動療法や感情制御のトレーニングが有効です。
⦁ 感情を抑えきれない:怒りや不満が原因で問題行動が繰り返される場合、専門的な支援が必要です。
10.イジメや脅迫に関する問題
⦁ イジメによる強要:イジメによる精神的ダメージが大きい場合、カウンセリングや支援団体の介入が効果的です。
⦁ イジメを避けるための譲歩:イジメを避けるために盗む行動をとる場合、カウンセリングや、学校内外のサポート体制の整備が必要です。
「万引き」と一口に言っても様々な原因が考えられます。
万引きを止めるには、行動の理由を正確にヒアリングすること。そして、専門的な治療が必要なケースなのか、別の問題が起きているのかをきちんと線引きすることがなによりも重要です。〔続く〕