心療内科で働くようになって20年になります。
子どもの頃から人間の心理や脳の働き、親子関係や育成環境が成人以降においてどの程度の影響を及ぼすか(かなりです!!)にとても興味を持っていました。
学生時代でした――アメリカからとんでもない「ノンフィクション本」が日本に入ってきました。連続レイプ犯として逮捕されたのちに『多重人格』を訴えて無罪となった者がいるというのです。
多重人格障害は現在、解離性同一性障害となっていますが、今回のコラムの内容上ここでは多重人格の表記を用います
24人のビリー・ミリガン
本のタイトルは『24人のビリー・ミリガン』
私と同世代の方の中にはこの書籍の名に記憶のある人も多いのではないでしょうか? 週刊誌などでも毎週のように取り上げられるほど、日本でもたいへん話題に上がりました。
当時の日本では、多重人格はおおむね「二面/2つの異なる人格」と思われていました。それがまさかの24人。そんなバカな。いくらなんでも多すぎる、と若かりし私は思っていました。
書籍は現在も販売されていますし、ネットフリックスではリミテッドシリーズのひとつとしてビリーミリガンのドキュメンタリー作品が扱われています。
衝撃的な内容も少なくありませんので、心がしんどい時やなにごとにも影響を受けやすい方、PTSDに苦しむ方のご視聴はNGがよいかなと。
自称・多重人格障害者が日本各地で多発
しかし、事実は小説より奇なり。
「私って多重人格だと思う。ときどき自分でも自分がよくわからなくなるから」「俺も多重人格かもしれない。俺の中に少なくとも5人はいる気がする。今話してる俺は直樹」などと激白してくる人が周りに増えていきました。
「直樹って誰(笑)」
「昼は直樹」
「昼夜で入れ替わるの?」
「直樹と入れ替わる奴に聞いてよ」
「しんどさや心の負荷で入れ替わるんじゃないの?」
「俺じゃなくてそいつに聞いてくれよ(イライラ)」
「夜は誰になるの?」
「日本人っぽくない気がするけど…」
「あんた英語話せないよね」
「あいつは話せるんだと思う」
「あいつって誰」
「…もううるさいなあ! ぐいぐいくんなよ(怒)」
性格上、違和感をおぼえたり納得がいかないことに対して追及しがちで解明したくなる私は、明らかにビリーミリガン本に影響をうけまくったと思しき自称・多重人格障害者たちに戸惑いを隠せませんでした。
直樹って誰だよ(笑)←まだ言う
しかし、時を同じくして多重人格者以外にもうひとかた、日本中いや世界中を震撼させたカリスマシリアルキラーが現れるのです。〔続く〕