二分脊椎とASDの32歳の女の子[2]三度目のHELP

二分脊椎症
Image by Dorothe from Pixabay

ドラマや映画の中だと、初対面の印象がお互いに最悪なほど物語は展開する。しかし現実はどうだ? 

9割の人間は、自分に対して礼儀をはらわない者を「嫌う権利」を持ち「離れる自由」を選択できる。もちろん私もそうすべきだったし、そのつもりだった。

けれど、2つの理由でそれは叶わなかった。
ひとつには国が定めた義務があり、もうひとつは――。

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心のSOS:最悪の出会いから始まる希望の対話~奏多さんの2度のHELP

「この奏多さんってかた、1月と5月にクリニックにもメールを送ってこられています」
「えぇっ、そうなの?」
「でもメッセージ内容は空欄で」
「どれどれ……?」

看護師の小林さんと田中さんが大きく一歩下がり、私はパソコンと向き合った。確かにメールアドレスは同じだ。

メッセージ内容が空欄では返信がもらえないということに、1通目からは半年、2通目からは1ヶ月経って気づいた奏多さんがようやくしぼり出した「二分脊椎にぶんせきつい」と「ASD」の二言。

2人の看護師が(どうするんです?)と言いたげに私の横に並んだ。彼女達の援護射撃に勇気をえたように、タイミング良く――悪くか?――奏多さんから立て続けにメールが2通届いた。

「言いたいけど言葉に出せない」
「それが悩み」

小林さんが私の顔を覗き込む――「先生?」

「なーに?」
「二分脊椎は専門外としても、ASDの相談にはのれるんじゃ……」
「そうだねえ」
「返信してあげませんか」
「そうだねぇ」

相当な覚悟か思いやりの拒否か

ASDはたしかに私の専門「内」だ。しかし奏多さんのばあいは二分脊椎という重い病気とASDはおそらく切っても切り離せない。

  1. ASDが持つ特性による悩み
  2. 二分脊椎を起因とする女性特有の悩み
  3. 上記2つと並走しながら必死で生きてきた彼女のもどかしさや苦しみ
  4. [1]ゆえに[2]の悩みにうまく解決策を見つけることができないという悩み

おそらくこういったところだろう。私にできるだろうか。奏多さんの人生の一部を引き受ける責任と覚悟はあるだろうか。途中で「できない」「わからない」「やーんぺ!」と投げ出すことは許されない。

彼女を見捨てない覚悟がなければ、中途半端に相談にのるべきではない。この場限りの優しさは逆に彼女を落胆させる。さあ、どうする私――(つづく)。

二分脊椎症
✍私が書きました
一 真由


心療内科|「心と体」に寄り添い続けて20年。「支える側」を支えたい。当事者には寄り添いたい。ヒアリングをとくに大切にしています。


✓毒親/虐待/機能不全家族 ✓ASD/ADHD/アスペルガー ✓アダルトチルドレン(AC) ✓新型うつ/社会不安障害 ✓不登校児相談 ✓虐待連鎖断ち ✓社会復帰認知の歪み


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