「良い成績を取ったら褒められる」「我慢していれば可愛がられる」「問題を起こすと冷たくされる」「親が認めた習い事で良い結果が出せなければ、目を合わせてもくれなかった」
ありのままのあなたでは、親は愛してくれなかった?
良い子が自分を見失う
- 頑張っているのに満たされない
- どこまで頑張ればいいのか分からない
- 合格点や到達点が見えないと進む道が定まらない
- いつも他人の評価が気になる
- ありのままの自分を好きになれない
- ありのままの自分なんかじゃ、きっと誰も本気で愛してくれない
自分らしく生きるとか意思とか自分軸、なんてものは正直よくわからない。「本当の自分」が何を求めて、どこに行きたいのか、誰かが決めて指さしてくれたらいっそのこと…楽なのに…。
患者さんやオンライン相談のユーザーさんのなかに時々、このように仰るかたがいます。穏やかで控えめでおとなしい。お勉強もそれなりにおできになったんだろうなという印象。
と、同時に――条件付きの愛情で育てられた人に多く見られる「後遺症」のようなものだと思うのですが、自己肯定感が迷子になっているような不安定さがうかがえます。
「無気力」に見える人もいるかな。目に光が宿ってない。生気をほとんど感じないかたもなかには。ふっと息をかければ今にも消えてしまいそうに、私には見える。そんな彼ら、彼女らの共通点は――。
条件付きの親の愛と賞賛
子どもの行動に応じて愛や賞賛を与える「条件付きの愛情」で育てられたバックボーンを持つことが多いですね。
親が子どもに対して「いい子だったら愛してあげる」「期待通りの行動をしたら認めてあげる」という形で愛情や賞賛や承認を与えることを指します。親自身には悪意がないことが多く、無意識に――なんなら良かれと信じて!――これを行っているケースがほとんどですが、「条件付きの愛情」で子育てをしてしまう親のその行動の原因として、特に以下の2つが挙げられます。
親の自己評価が子どもの行動に依存している
これは、「子どもの成績や出した結果、振る舞いが親自身の評価を左右する」と親が感じている場合に起こります。
- 具体例
- 子どもが学校で良い成績を取ったら、親自身が「自分は良い親だ」と感じられる。
- 子どもが周囲から褒められるような結果を出したり行動をすると、親が「自分の育て方は間違っていない!」と安心する。
つまり、親は自分自身の価値や評価を「子どもの成功や行動」に依存しているため、子どもが期待通りの結果を出さないと、
「自分が世間から否定されたような気持ち」「努力不足な親という烙印を押されたような気持ち」になり、無意識に子どもに圧力をかけてしまうのです。
- 子どもへの悪影響
- 子どもは「親を失望させてはいけない」と常にプレッシャーを感じながら生活をしています。
- 子ども自身の自己評価が安定せず、「親を喜ばせた時だけ、自分は価値がある」と考えるようになります。
子どもの成功や結果が「自己評価に直結している親」は、知らず知らずのうちに子どもに条件付きの愛情を注いでしまいます。
子どもが自分の期待を満たした時だけ『よくできたね』『愛しているよ』と伝え、子どもが失敗すると『がっかりだ』という態度をとってしまうのです。
競争的な世界観を持つ親の場合
競争的な世界観を持つ親は、「人生とは他者に勝つこと」「社会では勝者だけが成功する」という強い思い込みを持っています。
- 具体例
- 「勉強でもスポーツでも1位以外は意味がない」と子どもに教える。
- 「社会は厳しい」「勝ち抜かなければ幸せになれない」「〇〇大学に合格しなければ認めない」という価値観を子どもに繰り返し伝える。
このような親は、「競争に勝つための行動(勉強での成功、部活での活躍など)」をした時にだけ子どもを褒めたり、愛情を示したりします。
一方、そうでない場合には冷淡な態度を取ったり無関心になることが少なくありません。
- 子どもへの悪影響
- 子どもは常に他人と自分を比較し、「他人に勝つこと」が自分の価値だと考えます。
- 他人との比較で自分を評価するため、幸福感が安定しません。
- 負けることや失敗を極端に恐れ、チャレンジを避けるようになってしまう可能性があります。
競争的な価値観を持った親のもとで育った子どもは、常に他者と比較して自分を評価するクセがついてしまいます。
自分の内面から湧き出る幸せを感じにくくなり、失敗への恐怖から、自分らしい人生を生きる勇気を失ってしまうことも少なくありません。
もし、あなたが「自分のことかもしれない」と感じたら…
ここまで読んで、「もしかしたら、俺の親もそうだったかもしれない」「だから私は、こんなに生きづらいのかもしれない」と感じた方もいるかもしれませんね。あるいは、「自分も子どもにそんな接し方をしてしまっているかも…」とドキッとした方もいるかもしれません。
どちらの立場であっても、親御さんにも様々な事情や背景があったとはいえ、条件付きの愛情の中で育つことは、子どもにとって本当に過酷な経験です。
自分の価値を常に外部の条件に委ね、ありのままの自分を認められない苦しみは、大人になった今も、心を縛りつけているかもしれません。
もし、このコラムを読んで心がざわついたり、胸が苦しくなったなら…それはあなたがこれまで、どれだけ周りの期待に応えようと頑張ってきたか、そして、どれだけ深く傷ついてきたかの証拠なのだと思います。
よく頑張ってこられましたね。
ここから少しずつ、あなたを縛りつけてきた見えない鎖を解いていきましょうね。
本日のまとめ
今回のコラムでは、「条件付きの親の愛」とは何か、なぜ親がそのような形でしか愛情を示せなくなってしまうのか、その背景にある親側の要因として「自己評価の子どもへの依存」と「競争的な世界観」の2点について掘り下げてみました。
これらの親側の背景が、悪意なくとも子どもの自己肯定感や世界観に大きな影響を与え、大人になってからの生きづらさや、世代間の連鎖に繋がることがある、ということをご理解いただけたでしょうか。
次回予告
「じゃあ、具体的にどんな風に生きづらくなるの?」「この苦しさから抜け出す方法はあるの?」
次回は、このように条件付きの愛情と賞賛で育てられた子ども達が、大人になる過程で「具体的にどのような苦しい思いをしてきたのか」「どのくらい息苦しい思いで社会を生きているのか」という、より深い「後遺症」の部分に、さらに詳しくフォーカスをあてていきます。
そして、その見えない鎖から自由になるためのヒントも、少しずつ探っていけたらと思っています。ぜひ、次回の更新もチェックしていただけると嬉しいです。
✍オンラインカウンセリング「あたらしい今日」主宰・カウンセラー真由