発達障害と仕事 – 共に働きやすい職場を築くために今日からできること【最終話】

カウンセラー真由|あたらしい今日|新しい今日のイメージ画像 発達障害・特性

【第6話】発達障害の人が働きやすい職場とは?

「発達障害のある人が職場で困っていること、求めていることは分かったけれど、具体的に明日から何をすればいいの?」

このシリーズでは、発達障害の特性を持つ若者が職場で直面する困難と、求められる配慮について詳しく見てきました。

最終回となる今回は、これまでの内容を振り返りつつ発達障害の特性傾向のある人もない人も、誰もが共に働きやすい職場を築くために、企業や周囲の人が今日からできること、そして当事者自身ができることについて、具体的なアクションを提案します。小さな一歩が、大きな変化を生み出すかもしれません。

このコラムシリーズでは、全5回にわたり、発達障害(ASDやADHDなど)の特性を持つ若い方々が職場で直面する困難や、彼らが本当に求めている配慮について、具体的な事例を交えながらお伝えしてきました。

  • 第1話では、発達障害のある若年就労者の現状と、彼らが職場で感じる「見えない壁」について問題提起しました。
  • 第2話では、口頭指示の困難、マルチタスクの負荷、コミュニケーションギャップなど、共通して抱えやすい6つの困難を解説しました。
  • 第3話では、指示の文書化、マニュアル整備、集中できる環境、タスクの見える化など、当事者が求める6つの具体的な配慮策を挙げました。
  • 第4話第5話では、事務職、IT職、接客業、公務員といった業種別に、特有の困難と求められる配慮を深掘りしました。

最終回となる今回は、これらの情報を踏まえ、発達障害のある人もない人も、誰もがより働きやすい環境を実現するためにそれぞれの立場で何ができるのかを一緒に考えていきましょう。

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企業・職場が今日からできること – 具体的なアクションプラン

発達障害の特性のある就労者が能力を発揮し、安心して働き続けるためには、企業や職場全体の理解とサポート体制が不可欠です。以下に、今日からでも始められる具体的なアクションプランを提案します。

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取り組みのポイント 具体的なアクション例
1. 知る・理解を深める
  • 発達障害に関する正しい知識を得る(研修会、書籍、信頼できるウェブサイトなど)。
  • 当事者の声や体験談に触れる機会を持つ。
  • 「困りごとは本人の努力不足ではないかもしれない」という視点を持つ。
2. コミュニケーション方法を見直す
  • 指示は「具体的」に「一つずつ」「できれば文書で」伝えることを心がける。
  • 抽象的な表現や曖昧な指示を避け、期待する成果や期限を明確にする。
  • 質問しやすい雰囲気を作り、定期的に進捗確認や声かけを行う。
3. 業務環境を整える
  • 業務手順のマニュアル化を進め、誰にでも分かりやすい形にする(図やチェックリスト活用)。
  • 感覚過敏に配慮し、静かな作業スペースの確保や、照明・音環境の調整を検討する(イヤーマフ使用許可など)。
  • 休憩を取りやすい雰囲気を作り、必要に応じて柔軟な勤務形態(時差出勤、短時間勤務、在宅勤務など)を検討する。
4. 「見える化」を導入する
  • タスク管理ツールやホワイトボードを活用し、仕事の優先順位や進捗状況を共有する。
  • 会議の目的やアジェンダを事前に共有し、議事録を作成・共有する。
5. 相談しやすい体制を作る
  • 気軽に相談できる担当者(メンター)を決めたり、定期的な面談の機会を設けたりする。
  • 困ったときに助けを求めやすい、風通しの良い職場文化を育む。
  • ミスやトラブルが起きた際は、感情的に叱責するのではなく、原因を一緒に考え、具体的な改善策を伝える。
6. 個別性を尊重する
  • 画一的な対応ではなく、本人の特性や困りごとに合わせて、必要な配慮を一緒に考える(合理的配慮の提供)。
  • 得意なことや強みを活かせるような業務分担を工夫する。
  • 本人の同意を得た上で、必要な情報をチーム内で共有し、協力体制を築く。

これらの取り組みは発達障害のある社員だけでなく、職場にいるすべての人にとって働きやすい環境づくりにつながります。「うちの会社には関係ない」と思わず、まずはできることからひとつずつ試してみてはいかがでしょうか。

周囲の同僚・上司ができること – 寄り添う心と小さな工夫

企業全体の取り組みと合わせて、日々接する同僚や上司の関わり方も非常に重要です。

温かく見守る姿勢を持つ

すぐに結果を求めず、本人のペースを尊重しましょう。

「何か困っていることはない?」と声をかける

自分から言い出しにくい場合もあるため、気にかけていることを伝えましょう。

得意なことや頑張りを認める

小さな成功体験を積み重ねられるよう、ポジティブなフィードバックを心がけましょう。

曖昧な表現を避け、具体的に伝える

「あれ、やっといて」ではなく、「〇〇の書類を、明日までに3部コピーしてください」のように伝えましょう。

もし誤解が生じたら…

感情的にならず、何がどう伝わらなかったのか、どうすれば良かったのかを冷静に話し合いましょう。

当事者自身ができること – 自分を理解し、適切に伝える勇気

職場で困難を感じている発達障害のある方自身も、より働きやすくなるためにできることがあります。

自分の特性を理解する

何が得意で何が苦手なのか、どんな時に困りやすいのかを客観的に把握しましょう。専門機関に相談するのも有効です。

必要な配慮を具体的に伝える

困っていることや、どうしてほしいかを、できるだけ具体的に職場(上司や人事担当者など)に伝えてみましょう。このコラムで紹介したような配慮例も参考にしてください。

小さな成功体験を大切にする

できたこと、得意なことに目を向け、自信につなげましょう。

助けを求めることを恐れない

一人で抱え込まず、信頼できる人に相談しましょう。支援機関や当事者会なども活用できます。

体調管理を心がける

自分に合った休息の取り方やストレス対処法を見つけ、無理のないペースで働きましょう。

すぐに全てを伝えるのは難しいかもしれませんが、少しずつでも自分の言葉で発信していくことが、理解を得るための第一歩になります。

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誰もが働きやすい社会を目指して

発達障害のある方が職場で直面する困難は、個人の問題だけでなく、社会全体の課題でもあります。彼らが持つユニークな視点や能力は、適切に活かされれば、企業や社会にとって大きな力となり得ます。

大切なのは、「障害があるからできない」と決めつけるのではなく、「どうすればできるか」を共に考え、工夫していく姿勢です。そしてそれは、発達障害のある人だけでなく、様々な個性や背景を持つ全ての人が、自分らしく能力を発揮できる、真にインクルーシブな職場環境づくりへとつながっていくはずです。

このコラムシリーズが、そのための小さなきっかけとなれば、これほど嬉しいことはありません。

まとめ

全6回にわたるコラム「発達障害のある若者が職場で輝くために ~困難と求められる配慮のリアルレポート~」は、今回で終了となります。発達障害の特性や傾向を持つ方々が職場で直面する困難、そして求められる配慮について、少しでも理解を深めていただけたでしょうか。

企業も、働く個人も、そして当事者自身も、それぞれの立場でできることを見つけ、一歩を踏み出すことがより良い未来への扉を開きます。この情報が、皆さんの職場や日々の生活の中で、何かしらのヒントや行動のきっかけとなることを心から願っています。

✍オンラインカウンセリング「あたらしい今日」主宰・カウンセラー真由

情報ソース

発達障害・特性
私が書きました
一 真由

オンラインカウンセリング『あたらしい今日』主宰
心とからだの不調に詳しいお節介カウンセラー

心療内科領域に強いカウンセラーとして、生きづらさを抱える方々に寄り添いながら、誰もがいつからでもリスタートを切り「新しい今日」を迎えられるようにと願って、情報発信を行っています。ブログでは機能不全家族・毒親問題・子育てSOSを多く扱っています。

気軽に話してもらえるように。「独り」にならなくてすむように。人生に伴走することを大切にしています。通称カウンセラー真由

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