そんな親なら捨てちゃえば?
私が子どもの頃は今のようにSNSやネットが普及していなかったこともあって、親に虐げられていたとしても「親はまともで、自分が特別におかしいから躾けられているのだ」「親の機嫌を悪くした自分が悪いのだ」と思い込まされているふしがあった。
だけどやっぱり、心のどこかで「うちの家は変かもしれない」「うちの親は狂ってるかもしれない」って思ってたんだと思う。だから友達にさえ言えなかった。
1997年――家庭内に落ち着ける居場所がなく、もっともしんどくてつらいことを誰にも相談できず、さらに孤独を深めていく当時の子ども達にとってセンセーショナルな本が出版された。
日本一醜い親への手紙

1997年に発行されたこちらの御本は、瞬く間に日本中の話題にあがった。新聞や週刊誌はこぞってこの本を取り上げ、ワイドショーなんかも特集を組んでいたように思う。
この本は親から酷い虐待を受けた人々から公募した手紙を1冊にまとめたもので、累計30万部のベストセラーとなった。その後、2017年には新たに手紙を公募し、『日本一醜い親への手紙 そんな親なら捨てちゃえば?』と一部改題されて再出版された。
児童虐待の相談件数はこの25年間で100倍に増え、5日に1人の割合で虐待によって子どもが命を落としています。
少子化を憂える一方で、子どもの人権や命が軽んじられている、それが今の日本の現状です。
本書は、親に書いた手紙という形式によって、当事者の過酷な親子関係を世に伝え、子どもの人権が守られない日本の現状に100石を投じます。
自分以外にも、自分と似たような境遇や苦しみを抱えている人達がいるという事実は間違いなく当時の――毒親に悩みもがく子ども達の心に一筋の光をあてました。
孤独に生きていかねばならないと思っていたのに、突如として日本各地に同志がいるという事実を知ったあの日に、私は「正しく、気高く生きよう」と決めました。
それまで親を憎みながらも、うまくいかないことを親や育ちのせいにして自分に甘く言い訳をしながら生きてきた自分を脱ぎさり「醜い親とは決別してもいいんだ」「醜い親など、捨て去っても構わない」と腹をくくり、自分の生き方を自分で決められたのは、この本に出逢ったからといっても過言ではありません。
「親を捨ててもいい」と知った、この本に救われた青春だった
読むに堪えない惨い親がこの日本に多く存在し、血を吐くように苦しんでいる子ども達が大勢いると知れたあの日。
この本が最初に刊行されて30年ほどの時が経ちましたが、毒親に心を壊されている、今まさに壊されようとしている子ども達は依然として少なくありません。
私はそんな子ども達を診て、ケアサポートを続ける仕事に就いています。相談者や患者さんが一向に減らない現実に胸を痛めながら「毒親連鎖」「虐待連鎖」を元から断たなければ真の解決にはならないのだと今日もため息をつきながら。