二分脊椎とASDの32歳の女の子[6]具体的な支援とボーダーライン
奏多さんの自己導尿への悩みについて詳細を書く前に、私に救いを求めて3度も連絡をしてきた「二分脊椎症」という病気と「ASD」という発達障害、2種類の生きづらさを持つ彼女に、
心と体の専門家である私がどのようなスタンスで関わっていくことに決めたかを書いておきたいと思います。
家族と支援とピアサポートと治療者の「輪」
まず大前提として彼女には
⦁ 「二分脊椎症」という病気の主治医がいる
⦁ 継続しているリハビリに専門のPT(理学療法士)がいる
⦁ 継続しているピラティスの講師もPTの資格と専門的な知識を持っている
⦁ 「ASD」という発達障害についても、WISCの検査をうけた発達障害支援センター→精神科病院→公認心理士と、彼女を中心にきちんと「輪が繋がっている」
⦁ 彼女は「二分脊椎症」当事者へ積極的にコンタクトとり、ピアリスニングしている ※同じ体験や同じ障害、病気を持つ仲間の意見を傾聴し生活に取り入れている
こういった支援者や治療者が、ひとつの大きな輪で繋がっているというのは、クライアント自身にとってもご家族にとっても安心感がまるで違います。
そして、二分脊椎という病気に関しては専門外の私にとっても、奏多さんに関わっていくボーダーラインが決めやすい。
私の立ち位置と支援のかたち
- 「二分脊椎症」であるがゆえに、努力や頑張りだけではどうにもならない物事に対するもどかしさや憤り、やり切れない思いを受けとめカウセリングする
- 「ASD」による、強いこだわりやマイルールによる決めつけや思い込みから、彼女が「できないと決めつけていること」「他の選択肢などないと思い込んでいる部分」に具体的に手を差し伸べる
- 「女性の二分脊椎症」により彼女が医師やPTに相談しづらい部分を、医療ネットワークや私個人の人脈、勉強会への参加によってカバーする
そして、集団生活において「常識にやや欠ける」と誤解されてしまうであろうASDの特性を持つ彼女の言動を――彼女にとっては正式な理由や理屈があるにせよ――
彼女の自尊心をできるだけ傷つけないように、けれど社会でうまくやっていけるように「ライフハック」「処世術」のひとつとして伝えて、教えていくことにした。