二分脊椎とASDの32歳の女の子[10]「尿意を感じるのが難しい」
顕在性二分脊椎症の奏多さんの苛立ちや落ち込み、ストレスの最たるは失禁や自己導尿に関すること。つまりは排尿排泄にまつわる。
「尿意があれば失敗しなくて済むのに、どうして自分は……」
自己導尿とは?
●病気や障害により自力での排尿が難しいばあい、尿道口にカテーテルを挿入し、人工的に尿を排出させなければならない。これを導尿という。これを自身で行うことを「自己導尿」と言う。
●導尿の注意点として、膀胱に尿が残ると菌の繁殖につながるため「からっぽ」にしなければならない。
●又、導尿を行う際には踏まなければならない手順が多い。
自己導尿の手順
尿路感染を引き起こす可能性をできるかぎり「ゼロ」して行う必要があるため、自己導尿は細心の注意を全方面にはらっておこなわねばなりません。
用意するもの ※個人差や性差による
⦁ 自己導尿カテーテルセット
⦁ 清浄綿
⦁ 潤滑剤
⦁ 保存液
⦁ ※自己導尿になれないうちは鏡や小型のライト
⦁ ※排尿容器など
手順 ※個人差や性差による
- 石鹸を使ってきっちりと手を洗う
- 外出先ではなにがあるかわからないため、ウエットティッシュが必要
- 衣類を下げて導尿がしやすい姿勢をとる
- 尿道口を丁寧に拭く
- カテーテルの先端に潤滑剤を塗布
- カテーテルを尿道口に挿入する
- カテーテル挿入後に尿を出す
- 排尿後はカテーテルの内外を水道水でよく洗い、水をよく切る
- 保存液の入ったケースに戻す
単純に「トイレに行くだけでしょ?」「用を足すだけでしょ?」というものではありません。持参しなければならない物も手順もあまりに多いです。
病気や怪我などによる排尿障害を持つ人達に対する周囲の理解は、ほとんど知られていません。
女性の場合、自己導尿にかかる時間は15分くらいでしょうか。学生や社会人にとって『短く見積もっても』15分のトイレ利用や離席は、そうとう厳しいものがあります。
学生時代を思い返せば、休憩時間は昼休みを除くと10分程度です。
その10分をまるまる自己導尿に使えればいいのだけど、実際にはそうはいきません。
- 他の利用者がいた場合
- 教室からトイレへの移動距離
この2つを考えただけでも、とてもじゃないけど学校で安心して自己導尿の機会を得るのは難しいです。
社会人の場合も同様で、自己導尿のたびに15分前後(移動含む)離席をするのは周囲の目も気になるでしょうし、余計な気をつかわなければならずいつもどれだけしんどいことかと思います。
愚痴も弱音も無理解な周囲に対する悪口も、増えてしまう気持ちは痛いくらい想像ができる。けれど、愚痴や悪口を言い続けていても問題は解決しない。
奏多さんにヒアリングをすると3つの問題点がみえてきました。
- 導尿を1日5~6回などの「目安」で行っている点
- 導尿を「〇時間ごと」などの「時間割」で行っている点
- 勤務時間中に自己導尿がしづらい(離席できない)点
さーて。これらの問題を解決するには、似たような問題を解決できた人の話を実際に聞くのがもっとも早いのです。こういう時だけは私の肩書がその威力を如何なく発揮してくれるので助かります。