前回のコラムでは、(当時)72歳の父の免許返納までの流れを時系列にまとめ、且つ、社会問題化している「親の免許返納でぶつかる7つの大きな壁」をランキング形式でまとめました。
私自身の失敗を余すところなく紹介することで、小さなヒントでも持って帰っていただけたらと願わずにはいられません。
親へのオススメ説得方法は父にはお勧めじゃなかった
高齢ドライバーの免許返納を説得する際の手順には、以下に挙げるものが好例として勧められることが多いです。実際には高齢者への説得は個々の状況や性格に応じた配慮が必要ですが、一般的に有効とされる方法が以下になります。
- 家族や信頼できる人が話を切り出す
家族や長く付き合ってきた友人など、信頼関係のある人が説得を行うと、受け入れやすくなります。親しい相手の話は、より心に響くことが多いです。
父の場合:父にとっての親しい人とは「自分の言うことを聞き入れてくれる人」なので、父がNOと言えばそれをあっさりと受け入れる「イエスマン」ばかり。よって効果はありませんでした。
- 具体的なリスクを説明する
年齢に伴う判断力や体力の変化が事故リスクに繋がることを伝えます。特に最近の事故例やニュースがあれば共有し、高齢ドライバーにとっての危険性を現実的に伝えると効果的です。
父の場合:若い頃に運動神経がよかった父は「同世代と一緒にしてくれるな」という思いが強く、同世代である高齢ドライバーの事故は完全に他人事でした。
- 過去の運転トラブルを振り返る
もし最近運転ミスがあった場合(標識の見逃し、車体の傷など)、それを一緒に振り返ることで危険性を自覚させます。
父の場合:前回のコラムにも書きましたように、2021年4月から5月にかけて2度の“こすり”と、2度のアクセル/ブレーキの踏み間違えを起こしているにも関わらず
「たまたま」「偶然」「問題ない」と笑い飛ばしたり、逆ギレを繰り返していました。心の底から蹴飛ばしてやりたかったです。
- 他の移動手段を提案する
免許返納後も安心して生活ができるように、代替手段を提示します。
公共交通機関の利用や、タクシーの割引制度、デマンドバスやライドシェアなどの地域交通サービスを紹介すると安心感を持ってもらいやすくなります。
父の場合:実家~父が当時開院していた病院のどちらの『目の前もバス停』でしたので当然のようにバス通勤を勧めましたが、
「やってられない ※こっちのセリフだよ」
「乗ってられない ※はぁ?!」
「待つのが面倒くさい ※うるせえ!」
…結果的にはバス通勤になりましたが、そこに至るまでは終始これを言い訳にしやがったので姉弟3人、うんざりでした。
デマンドバス/デマンド交通とは?
デマンドバスは、利用者の予約に応じて運行する小型の公共交通サービスです。
通常のバス路線とは異なり、定められたルートや時刻表がなく、利用者の予約に基づき最適なルートを走行するのが特徴です。
そのため地域の交通手段が限られている高齢者や交通弱者にとって利用しやすく、特に都市部から離れた地域やバスの本数が少ない地域で導入されています。
デマンドバスの主な特徴
⦁ 予約制:事前に電話や専用アプリで予約が必要です。
⦁ 柔軟な運行ルート:利用者の乗降場所に応じた最適なルートを自動的に決定し、効率的な運行を行います。
⦁ 低コスト運営:通常のバス運行に比べてコストを抑え、地域の公共交通として運用可能です。
⦁ ほんの一例です。全国的に試験的にデマンドバスを取り入れています。又、情報は随時更新されますので各自でお調べくださいますようお願い申し上げます。〔福岡〕〔香川〕〔福島〕〔大阪〕〔山梨〕〔東京都北区〕〔鳥取〕〔岡山〕〔京都〕〔丹波篠山〕〔富山〕〔滋賀〕※令和6年10月30日調べ
メリット
⦁ 高齢者や交通弱者の移動手段として有効:徒歩圏内の停留所から利用できるため、運転免許返納後も安心して移動できます。
⦁ 環境負荷の低減:需要に応じた運行であるため、運行が無駄になりにくく、燃料消費や環境負荷の軽減にもつながります。
デマンドバスは、地域の高齢者の足として重要な役割を果たすだけでなく、地域活性化や住民の利便性向上にも貢献しています。
- 免許返納のメリットを強調する
返納後に受けられる自治体の特典(公共交通の割引やタクシーチケットなど)や、免許を返納することで生まれる安心感や、他者の安全を守れるという社会的意義を伝えます。
父の場合:特典にはまったくメリットを感じていませんでしたが、「安心感」という部分においてはすこし心が動いている様子が見られました。
しかし、免許返納への決断に直接的に響くほどではありませんでした。
- 専門家の意見を取り入れる
病院や運転免許センターなどの専門機関でのアドバイスや、医師からの見解を伝えると、客観的な意見として受け入れやすくなります。
父の場合:前回のコラムにも書きましたが「眼科検査の予約申し込みを勝手にキャンセル」「 認知症検査の予約申し込みを勝手にキャンセル」など、父本人も医師でありましたので、悲しいほどに効果なし! ぎゃふん!
- 免許更新時期をタイミングに利用する
免許の更新が近づいている場合、そのタイミングを利用して「今後も続けられるかどうか」を考える機会として捉えさせるのが効果的です。
父の場合:当時の私たち姉弟は父の起こした2度の“こすり”と、2度のアクセル/ブレーキの踏み間違え ※1か月調べ
――に対して焦りがありました。急がなければ大ごとになると。ですので次回の免許更新時期を目安になど悠長な視点を持ち、待つことはできませんでした。
- 感情に寄り添いながら進める
免許返納は個人の誇りや自立心にも関わるため、相手のプライドや感情に配慮し、理解を示しつつ進めるとスムーズです。
父の場合:年齢を重ねると頑固になる人は実際に多いです。
論理的に話ができていた過去の父の姿はそこにはなく、老いそのものや体力の低下、反射神経の低下を受けいれることに強く抵抗し
「今さらの生活の変化 ※自家用車→バス利用等」を嫌い、 逆ギレ、泣き落とし、拗ねる、黙る、無視などありとあらゆる手を使い反抗を示す『老いた幼児』のようになった父に寄り添うことは至難の業に思えました。
そんなわけで、一般的に推奨されている高齢ドライバーの免許返納説得方法や手順は私の父にはまるで効果がありませんでした。
しかし実際には初回の話合いから約半年で、父は自主的に警察署に足を運び免許を返納しました。「免許返納してきたー」と事後報告があり、姉弟ともにたいそう驚いたものです。
⦁ 2021年06月09日(水曜日)初回話し合い
⦁ 2021年06月24日(木曜日)第二回話し合い
⦁ 2021年07月18日(日曜日)第三回話し合い
⦁ 2021年08月05日(木曜日)ディーラー/レンタカー業者に依頼
⦁ 2021年08月10日(火曜日)保険会社に連絡
⦁ 2021年09月02日(木曜日)第四回話し合い
⦁ 2021年09月15日(水曜日)廃車専門業者に依頼~手続き
⦁ 2021年10月03日(日曜日)決別
⦁ 2022年01月12日(水曜日)警察署へ自主免許返納
私達姉弟がどのように父の頑なさに訴えかけたのか、当時の落胆や激しいバトルも赤裸々に綴りたいと思います。次回へ続きます。