二分脊椎とASDの32歳の女の子[9]強い苛立ちと依存
これはまだ、奏多さんが「おむつをしているなんて恥ずかしい」と毎日のように言い続けていた、彼女と私が知り合ったばかりの頃の話――。
奏多さんは早い時には朝6時から就寝前の23時過ぎまで、放っておけばずうっとメッセージを寄越した。毎日、毎日、それが続いた。内容の大半は下記のループになる。
- 導尿へのいらだち。
- 失禁へのいらだち。
- 失禁をとがめる母へのいらだち。
- 病気を理解してくれない職場のいちぶの人たちへのいらだち。
- 自分がいかに可哀そうな存在であるか。
- それでも頑張っている自分を誰も認めて称えてくれないという愚痴。
はじめの頃は、溜まりに溜まったフラストレーションと、「受けいれられたい」という渇望があるのだろうから仕方がないと彼女を彼女が求めるままに受けとめるようにしていた。
しかし湯水のようにあふれ出す奏多さんのいらだちと愚痴は留まるところを知らず、見る間に「依存」のきらいが見えはじめた。
愚痴・悪口・不平不満そして依存
私は彼女にとっては1時間3,000円の有料カウンセラーだ。
しかし私の本業は心と身体の専門家だ。
なおせるものは、なおしてやりたい。
患者がカウンセラーや医師に依存傾向になることは、なんら珍しいことではない。患者当人にその自覚は薄いことがほとんどだから、自ら「線引き」させることはできない。
まずは彼女のいらだちと強いストレスの原因になっている、失禁のミスを減らしていくことから着手しなければ――。