子どもが『緊張をおぼえてしまう』家庭環境とは?

親たちが思っている以上に、悪しき夫婦仲・家庭環境は子どもの心に影を落とします。
ある日を境に家族ではない者、例えば『新しいお母さん』や『お母さんの彼氏』が家にやってくるような状況は言わずもがな緊張を強いられる家庭環境にあたりますし、「教育虐待」ももちろん緊張を強いられる悪しき家庭環境です。
こういった特殊な環境でない最も身近なところにあるのが「夫婦仲」「夫婦喧嘩」「仮面夫婦」「家庭内別居」。家の中は本来「心が安らぐ場所」「落ち着く場所」「安心していい場所」「心身ともに傷つけられない場所」であるはずなのにそれが許されない、子どもに過剰な緊張を与える親のつくる空気。
子どもに緊張を与える家庭
- 「自分を介して」両親が話す、といういびつな環境。
- 両親それぞれが自分に「相手の悪口や愚痴」をこぼす状況。
- 自分と父親、自分と母親など「会話が個別」なものばかり。
- リビングの冷えた空気、両親のあいだに漂う冷めた空気。
- 帰宅が遅い父親に、聞こえるように母が自分に対してこぼす嫌味。
- 母の嫌味や愚痴が聞こえているはずなのに「聞こえていないもの」として過ごす父親。
- 週に1回以上の夫婦喧嘩。互いを無視している両親。
- その他
これらは子どもの心をいとも簡単に蝕み『とてつもなく長いあいだ巣食う』のです。
また、このような「緊張を強いられる家庭環境」で育った子どもは、情緒を安定して保つことが難しくなり、親の手を離れた成人以降にも、ありのままの自分を認めたり「自身の成果を正しく褒める」ことを苦手とします。

- 家庭環境がよくなかった。
- 家のなかの空気が常に重く強張っていた。
- 夫婦喧嘩を見るのも聞くのも嫌だった。
- 家がとにかくしんどかった。
- 親から聞かされるもう片方の親への悪口がつらかった。
- (シングルになった)親の恋人が家に来るのが、死にたいくらい嫌だった。※性的虐待の有無に限らず
- 躾が異常に厳しく、いつも首を絞められている感覚があった。
- 親が決めた厳しいルールが多くて、息をつく暇がなかった。信頼されていないと常に感じていた。
「虐待」ではなく、外から見れば「一見ふつうの家庭の、一見ふつうに見える親たちがつくる家庭環境」の影響はあまりにも大きいのです。
大人になった子どもの声も、知ってほしい
- 『親ガチャに失敗したと思う』
- 『もしもあの親のもとに生まれてなかったら』
- 『苦しくてつらくて、毎日胸が抉られそうだった』
- 『なんのための、誰のためのルールなんだろうといつも思っていた』
- 『父親の悪口を母親から毎日聞かされるから、家にいるのが苦痛だった』
- 『自分は、親が叶えられなかった夢や目標を、代わりに叶えるための道具ではない』
機能不全家族が背景にある、少年犯罪がニュースで取り上げられるたびに「同じような家庭環境に育っても、罪を犯さない者もいるだろう!」「俺も虐待をうけて育ったけれど、そんなことはしてないぞ!」と声高に叫ぶ人達がいます。
他者を壊す者と、自己を壊す者、どちらもいるのです。
他者を壊すと罪になり、自己を壊す者が社会的には罪になりにくい。
「家庭環境」「毒親」は非常に根深い問題です。
子どもが安心できる家庭を取り戻すための、父親・母親それぞれの小さなステップ

以下の提案はあくまでも「小さなステップ(第一歩)」としての例になります。
実際には各家庭の状況や親同士の関係性、子どもの性格・年齢などに応じて柔軟に工夫してみてください。必要であれば公的機関・カウンセラー・専門家の助けを早めに求めることも重要です。
父親としてできること
- 「子どもを通さない」コミュニケーションを心がける
- 夫婦のことや家の問題を、子ども経由でやりとりしない。例えば「母さんに伝えておいて」など、子どもを伝書バトのように扱わない。
- 自分に向けられた不満や要望は、直接母親と話し合うようにし、子どもを介さない形を意識してみる。
- 「聞こえているのに聞こえないふり」をやめる
- 悪口や嫌味を耳にしても、面倒だからとスルーせず、「ちゃんと聞こえている」「その言い方は子どもの前では良くない」と伝える。
- 勇気がいる行動ですが、「聞こえないふり」を続けると子どもがさらに混乱し、家庭の空気が重くなる一方です。
- 子どもの気持ちを「想像して聞いてみる」
- 「家の空気、最近どう思ってる?」「何か嫌な思いをしていない?」と、子どもの気持ちに配慮した声かけをする。
- 子どもが言いにくそうでも、小さなサインを見逃さず「なにか話したいことがあったら聞くよ」と安心できる場をつくる。
- 短い時間でも「子どもと向き合う場」をつくる
- 仕事が忙しくても、一日数分でもいいので、子どもを安心させる時間をあえて取る。
- 子どもの好きなことを一緒にやる、学校の話を聞くなど、小さな交流が大きな安心感になる。
- 必要に応じて「ごめん」を伝える
- 「忙しくて余裕がなく、怒りっぽくなっていた」「ストレスを子どもにぶつけていた」など、反省できる点は素直に謝る。
- 大人が「自分にも非があった」と認める姿は、子どもにとってとても大きな救いになります。
母親としてできること
- 「夫への愚痴」を子どもにこぼさない・控える
- 父親に直接言えない不満や怒りを、子どもにぶつける形で吐き出していないか見直す。
- 夫の悪口を子どもに聞かせるほど、子どもの心を追いつめている可能性が高いと理解する。
- まずは「一度落ち着いて話す」機会をつくる
- 直接話すのが難しければ、メモ書きやSNSのダイレクトメッセージなどを通じてでもよいので、頭ごなしに否定や攻撃をし合うのではなく「何が辛いか」「どうして欲しいか」を冷静に伝え合う。
- 夫が会話を避けがちであれば、共通の友人・親族・第三者(カウンセラーなど)の力を借りることも手段のひとつ。
- 子どもの気持ちを最優先して「空気を整える」努力をする
- 自分がイライラしていると、子どもが一番気を使い、ストレスを抱えやすい。子どもに向ける言葉のトーンや態度を意識的に穏やかにしてみる。
- 夫婦喧嘩をするにしても「時間・場所」を少し考慮するなど、子どもが巻き込まれにくい工夫を取り入れる。
- 一方的に気持ちをぶつけるのではなく、伝わる形を模索する
- 「あなたが悪い」「どうしてわかってくれないの!」だけではなく、「私自身がこう感じている」という伝え方を意識する。
- 相手に届けたいなら、まず自分の伝え方を工夫しないと届きにくいものです。
- 「私も悪かった」と子どもに伝える勇気
- もしこれまで子どもに夫への不満をぶつけていた、子どもを介したコミュニケーションをしていたと気づけたら、素直に「ごめんね」と伝える。
- 大人が自分の非を認める姿が、子どもの心の救いになります。
家庭全体としてできること・小さな改善策
- 夫婦が「共同戦線」でいることを意識する
子どもにとって「両親は味方同士だ」と感じられるだけでも安心度が上がる。ケンカをしなくなるわけではないが、「子どもの前では最低限の敬意を持つ」「意見が違っても子どもを巻き込まない」というルールを共有する。 - 話し合い・衝突の「時間」と「場所」を決める
子どもの前でヒートアップしやすいなら、子どもが寝ている時間や、別室など、ある程度話すタイミングや場所を決めて「ここでしっかり話そう」とする。
これだけでも子どもは「いつ怒号が飛び交うか分からない恐怖」から少し解放される。 - 専門家の手を借りる・公的機関を利用する
夫婦だけでの話し合いがうまくいかないなら、家庭問題に詳しい相談所や、カウンセリングを利用する。近年は児童相談所や地域のファミリーサポートセンターでも話を聞いてもらいやすくなっている。 - 「夫婦だけ」「親子だけ」「家族全員で」など、場面に応じて話す枠を分ける
- 夫婦間のこと:子ども抜きで。
- 子どもの話や進路の話:夫婦そろって、あるいは親子だけで落ち着いて。
- 家族会議:大きなテーマ(家でのルールなど)を整理する。
それぞれ時間や場を分けるだけで、子どもが無駄に巻き込まれず、夫婦間の話が混ざって空気が悪くなることも少なくなります。
- 「小さなポジティブ」を増やす
- 子どものいいところ、少しでも成長したところを親同士で共有してみる。
- 些細な家の雑事でも、相手がやってくれたことは「ありがとう」と口に出してみる。
- ぎこちなくてもポジティブを増やすと、空気の重さが少しずつ和らぐ。
まとめ
- 父親と母親がそれぞれ「子どもを通したコミュニケーション」をやめることが第一歩。
- 嫌味や悪口を「言う側」も「聞こえないふりをしてスルーする側」も、結果的に子どもに負担を与えていると理解し、それぞれが改める必要があります。
- 小さな一歩として、「まずはお互いの言い分を直接伝え合う」「子どもが話しやすい雰囲気づくりをする」「言葉のトーンや表情に気を配る」などから始めるとよいでしょう。
- どうにもならない、あるいは長期間こじれている場合は遠慮なく専門機関やカウンセリングを利用し、子どもを守るためにも早めに行動してみてください。
子どもを「心が休まる場所」で育てることが、結果的には親自身にもプラスに働きます。最初は難しく感じても、一歩ずつできることから試し、改善していくことを目指してみてください。